概要
女童として清盛の妻に仕える玉虫は、七つ年上の教経にはじめての恋をする。
平清盛の甥である教経は、幼少時に厳島の海で市寸島比売命(イチキシマヒメノミコト)と出会い、竜神の加護を得ていた。
やがて平家は源氏の勢いに呑まれ、西国での再起をはかり都落ちを選択する。
玉虫と教経の前に現れ、海神ノ宮へ誘う市寸島比売命。
教経に対して、一門を捨てて大陸へ渡るように勧める玉虫の兄。
源平争乱の中、玉虫はひたむきに初恋を守り続ける。
#平教経 #玉虫 #小宰相 #菊王
© 2021-2024 小枝芙苑
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!最後まで戦い続けた平家武者と、彼を慕い続けた娘のもう一つの平家物語
平家物語、というと皆さん学校で習うと思うのですが、驕れるものは久しからず、ということで、貴族化した平家がその権に溺れた結果、源氏に敗れた……というような印象を抱いている人も多いのではないでしょうか。
この物語では、最後まで武門の誇りと勇猛さを忘れなかった教経(のりつね)と平家の行く末を、彼を幼い頃から慕い見つめ続けた玉虫という少女の目線で描いています。
古典をベースにしていますが、玉虫の目線を通すことで親しみやすく、また彼女の切ない恋心が物語に花を添えています。
全体的に軽やかでありながら、丁寧に史実を追っていて、また当時の習俗なども細やかに描かれているため、歴史物語としてもしっ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!美しい…… そこに潜む強さも弱さも様々な熱を感じてほしい平家物語
カクヨムをやってて良かった……。
満足の溜め息と、涙が滲む目元を押さえながら読了しました。
平安末期、平清盛の甥である「教経」と彼を慕う女性「玉虫」の物語です。
恋の始まりからその結末までを、大きな時代のうねりを感じながらお楽しみ頂けます。
英雄的な人物の活躍を描く軍記物語というよりは、あの時代に生きた人々の人間ドラマが丁寧に綴られています。
情景も、人物達の心情も、選び抜かれた言葉できめ細やかに表現されていて、どんどん惹き込まれ、心が震えました。
平安宮中の様子を描くのがとても巧い作者さんなので、源平時代が気になる方だけではなく、平安の恋物語が好きな方も大いに楽しめる物語だと思います…続きを読む - ★★★ Excellent!!!盛者必衰の波を踏み越え、諸行無常の世に咲き誇ったその花の色は
数々のドラマがある源平争乱。
本作は、平家に仕える『玉虫』という女性が主人公の物語です。那須与一が射抜いた『扇の的』の横に立っていた美女が彼女です。
勇猛な将・平教経を幼少時から慕い続けた玉虫。
教経を見つめる視線の端々に映りゆく世の盛衰。
それらが過不足のない端正な筆致で綴られ、この時代の女性の立場や戦況の厳しさなどがすっと理解できました。
何よりも、心理描写が非常に巧みで素晴らしかったです。
少女から大人の女性へ移り変わっていく玉虫の心境が手に取るように分かり、深く深く共感しました。
滅びへ向かう一方の状況の中、ひたむきに教経を想い、決して自分を見失わずに背筋を伸ばし続けた玉虫の姿は…続きを読む