第28話 06時17分
先生から男子生徒の話を聞いたあと、私は、いつもより少し遅い時間に、昇降口に居ました。周りには、ほとんど、生徒は居ません。
私は、基本1人で帰ることが多く。あっ、友達いない。とかそういうことではなく。図書委員の時は、他の子と帰る時間が違うから。
でも、よく考えると普段でもあまり――みんなと帰ることはないかもしれません。私は部活はしていない。だから、部活をしている子とは、図書委員のない時でも、帰る時間が違う。だから1人で帰る。というのは結構ある。
あっ、でも、休日などに、仲の良いこと遊びに行くという事とかは、普通にあります。最近のブームは、近くにできた、ドーナツチェーン店に、みんなで行くかな。あ、でも……結構ハマってしまって、1人の時も行っているかも、食べすぎには注意しないと――でも「ドーナツ美味しいから。仕方ないよね」と、1人で、何か考えていたからか。靴を履いて、さあ、帰ろうと、歩き出した時。隣に人が居たらしく。ぶつかってしまった。
「きゃ」
「……あ、悪い」
「い、いえ、すみません。前をちゃんと見てな――――あ」
「うん?あっ、図書委員の人」
私がぶつかってしまったのは、それこそ先ほど、先生から聞かれた男子生徒でした。
何かしていたのだろうか?確か、私が図書室を閉める少し前には、帰っていたはずだけど……忘れものとか。かな。と、思うことにって、それより、私、ちゃんと認知されてたことに驚きました。
「そ、そうだけど――あなた……最近いつも図書室来てる――人だよね?」
「あー……そう。まあ、いろいろ。あって、じゃ――――あまり、ドーナツのことばかり考えて歩くと、危ないぞ」
「なっ……なんで知って――」
「ぶつぶつ声に出てた」
一生の不覚とは、こういう事でしょうか。と、心の中で思っていた。恥ずかしくて、悲鳴のような声が、心の中で出ていました。
「……嘘」
「ほんと、まあ、俺しかいなかったから。他には聞かれてないと思うぞ」
「――――だと良いのですが」
私は、言いつつ前を向いた。絶対顔が赤いから。これは見られては行けない。絶対。
「じゃ、じゃ、私は」
「あ、ああ」
私がそう言うと、男子生徒は止めることなく。話を終わらせてくれたので、セーフ。ちょっと早歩きで、帰宅。
家まで、早歩きをしたのか。自宅に、着いた時間が思ったより早く。まだ、18時17分だった。多分、最速で、学校から帰って来たかもしれない。
これ、次会ったらからかわれる。かもしれない。と、私は思っていた。昇降口で、1人ぶつぶつ言っていた図書委員の人とか、思われたのではないだろうか。と。
けれど、実際は、そんなことはなかった。むしろ、図書室では、全く話しかけてくることもなかった。が、その次の当番の日。私が受付に座っていると、男子生徒が来た「時間差で来たか」とか思ったのだが、そんなことではなく。
「……すみません。これ――返却で」
「――あっ。はい。わかりました」
私は、頭の中にあった、邪魔な考えをどけて、仕事をした。
「……あっ、この本」
その時、男子生徒が読んでいる本までは、知らなかった私。そういえば、初めて私が受付にいる時に返しに来たと思う。
そして、男子生徒が持ってきた本は、私も好きなシリーズのもので、家にも買ってあるくらい。まさかそれをこの男子生徒も読んでいたとは、かなりびっくり。私の手は止まっていた。
「あの――?」
ここで、手が止まっていたことに気が付いて。慌てて再開。
「あ、ごめんなさい。えっと、返却で――」
「あ、あと、これ、借ります」
「はい。わかりました」
いつも通りの手続きをして、続きの本を渡すと、男子生徒は、席に戻っていった。一方、私は、ちょっとした、というか。小さな目標ができた。
私のまわりの図書委員は、じゃんけんで負けた。という人や。なんとなく。と、言う人が多い。なのであまり本のことで話せる機会はない。だから同じ本が好きなら、ちょっと、あの人と話してみたいと思った。
けれど、私と男子生徒に図書室以外での接点がない。いや、隣のクラスということはわかっているのだが――。
この前の隣の先生の質問と。図書委員で貸し借りの際には、学年と各自に振り分けられている。番号まあ、出席番号なのだが。それを、言って貸し借りのため。男子生徒が名前を言うことはないが。私は貸し借りの際に聞いたが学年と番号で、その人のバーコードを読むので、パソコンの画面上では貸し借りの状況がわかる。そして、画面には一応生徒の名前が出ている。
――
でも、隣のクラスに、行くこともなかなかなく。そもそも行ったところで、話しかける勇気が私にはなかった。なので、図書室で――と、思ったのだが、図書室で雑談するわけにはいかないので、なかなかきっかけがなかった。
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