第7話 09時38分

 ドーナツ屋を、後にしてから、明日には、死ぬんだし。学校には、もちろん行く気にならなかったので、ぶらぶら歩いているのだが、お隣では……。


「せっかく外に、出たんだから。最後に、高校見てきたらどうですか?死ぬ間際に後悔しても行けませんよ?」

「サボりが、バレるじゃん」


 案内人とやらが、お節介おばちゃんになっていた。訂正。お節介女の子。


「遠くから見る。でも、いいのでは?ギリギリで、見たかった思っても、もう見れませんよ?わたしなら、見たいですが」

「なんか、おまえが高校を、見たいって感じだな」

「まあ、現役高校生の担当は、はじめてで、高校みたいんですよ」

「別に、高校生じゃなくても、思い出とかであっただろ?思い出の高校だから行きたいとか。なかったか?」

「まあ、少しはありましたが……でも、そういう人は、他にもたくさん行きたいところあって、さっと見て、次とかだったので、ゆっくり遠くからでも見たいなと」

「待て待て、勘違いがあるかもしれないが。俺なんか、行っても、速攻Uターンだぞ?」

「……ゆっくり見る気は、無いと」

「思い出ないしな」

「ほんとに――思い出ないんですね」

「ないな……まあ、でも、行くとこないし。暇だから、行ってやるか」

「なんやかんや言って、行ってくれるんですね……優しいじゃないですか」

「優しくはないな、単なる時間潰しだ」

「そう受けとっておきます。じゃ、行きましょうか?どっちですか?」

「向こう」

「じゃ、行きましょう」


 実は、今までは、高校とは、真逆に、歩いていたのだが。行くことになったので、渋々、渋々進路を正しい方の、ちょっと遠回りの道を選び歩いた。ちなみに、普段は5分くらいの電車通学だが、今は、歩いて向かった。これの方が時間つぶしになるだろうしと、思い。

 隣にいる、案内人からは、クレームなどはなかったので、道やらを、把握しているはない様子。


 そして、いつもより、長い距離を歩いていると、通っていた。高校が見えてきた。昨日も来たので、特に変わることなく。いつも通りの高校が見えてきた。


 一応、この高校も、在学はしているが。ただ行って、帰ってくる。校内で、話すのは、必要最低限くらいだったので、ほんと、思い出とかないんだが。もちろんだが、部活なんて入っているわけもなく。帰宅部。っか、今思えば、よく毎日行ってたなぁ。と。頑張った俺。


 ふと、近くのお店の中にある、時計を見ると、9時38分。時間的には、授業中か。

まあ、そこまで、近づく予定はないので、気にしなくていいかと、もう少し、高校への道を歩いた。

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