第8話 10時37分

 高校へ来た。いや、来たと言うより。高校が見えるところに来た。

多分、今の時間なら授業中。なんかバレたら面倒だし。今頃――どうだろう。無断欠席で、なんやらかしてそうだから、遠くから見ている。


「あれですか、あなたの学校」

「そうだ、普通だろ」

「建物は、中学校とかと、変わらない見た目ですね」

「だろうな。っかおまえ……高校知らない?」

「ええ、知りません」

「つまり――それまでに死んだ」

「ですね」

「じゃ、こっちよりそっちでの方が長いのか?」

「いえ、今あなたがいる世界の方が、私も長いですよ?」

「そうか。じゃ、次行くか」

「早っ。ホント一瞬……まだ数分ですよ、いいんですか?」

「問題ない」

「……ほんと、思い出なんですね」

「バレて、連行されてもな」

「これだけ離れてればそれはないと思いますが――」

「いいんだよ。俺は行くからな」

「わかりました。ありがとうございます。見せてくれて」

「礼を言われるようなことでもないだろ」


 その場を離れて、高校とは、また、真逆の方に歩き出す。

 行き先は、全く考えてない。ただ離れるために、歩いている。死ぬ前に、高校連行とか、絶対嫌だからなうちの高校何気に、生徒指導の先生怖いから。捕まったら大変。絶対連行と、なんか書かされそう。早急に離れる。

 案内人やらも、ちゃんと付いてきている。ホントに、俺が死ぬまで、このままそばにいるんだろうな。この雰囲気は。


 ――何も考えないで、歩いていたが、多分このまま歩くと……駅があるか。すると。


「どこ行くんですか?」


 隣から、声がかかったが、まあ、決まっていないので、俺の返事はこうなる。


「決まってない」


 そして俺の返事がそっけないから、会話が終わるかと思ったのだが――続いた。


「なら、次は、小学校でも行きませんか?」

「誰の」

「もちろん、あなたのですよ。私のところ行ってどうするんですか。まあ、教えませんけど」

「……ですよね」

「いやですか?」

「……まあ、行くとこないし。行ってもいいが――――」

「近くですか?」

「言わない。って言っても、ずっと聞かれそうだからな……」

「ですね。その予定です。言わないなら言うまで聞きますね」

「怖っ……まあ――この先の駅から電車乗って、しばらくだな」

「しばらく……うーん。やっぱり……?」

「なんだ?」

「あ、いえ、こちらのことです。じゃ、行きましょう」


 そのまま2人で、駅に向かい歩くことに。駅に着いたのは、10時37分だった。

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