第14話 16時31分

 移動と、言っても行くところは決まってない。


「どこ行くんだ?」

「え?決めてないんですか?」

「ない。あるわけないだろ?こんな急に」

「デートなのに、いきなり減点ですね」

「おまえの方がいろいろ知ってるだろ。今までの経験的に、行きたいところ行けよ」

「丸投げじゃないですか。まあ、仕方ありませんね。振り回してあげましょう。でも、私もデートの経験ないので……やってみたい事で、振り回しますね」

「――――帰りたい」


 しばらく、案内人に、付いていくと。付いた先は、なんか賑やかな場所。


「ゲーセンかよ」

「プリクラとか、欲しいでしょ?」

「写真嫌いなんだが」

「撮りますよ?」

「おまえ――――めっちゃ、人振り回すの楽しそうだな」

「はい、あなたを、振り回すの楽しそうですから。はい、まず、入る。で、お金お金」

「おまえ1人で撮れば?」

「なんでですか!ほら、早く」

「ちょ、引っ張るな」

ついには、腕まで掴まれて、機械の方に、引きずり込まれる俺。

「ダメです。逃げますからね」

「っか、写真撮っても、死ぬんだよな?」

「ですね。でも、ちょっとの間ニヤニヤできますよ?」

「しないから」

「どうでしょうね?」


 意外に力はあるのか。俺が弱いのか。腕引っ張られて、機械の中に、来たことないしわからないが。となりの楽しそうなやつが、勝手にしてくれた。


「はい、じゃ、どうしますか?――――その、抱きつきましょうか?」

「やめろ」

「じゃ、腕にしがみつくくらいにしましょうかね」

「急に距離近いな」

「デートですから。ほら、とりますよ」

「…………」

「真顔はやめましょうよ」

「いや、知らん。普通にしてるだけだ」

「やっぱ、、、抱きついた方がいいですか?」

「やめろ、っか、くっつくな」


 っか、すでに、案内人さん。くっついてきているので、変に動けないんですが――。


「えー、初恋の人ですよ?」

「偽物だろ?」

「この見た目、彼女に近いんですよね?ほらほら」

「違う意味でも、近いから。あと、くっつくな。」


 結構しっかりくっついてくるこいつ。いや、ちょっと嬉しいけどさ。今ままでにない経験だし。甘えてるみたいなの――ちょっとかわいいし。でも、楽しまれてるというのか。遊ばれてるんだろうと。わかっているから……複雑っか。


「チャンス」


 そんな声が聞こえたと、同時くらいに、なんか、急にシャッターの音がしたような。


「不意打ち完璧」

「おい」

「照れてる照れてる」


 マヌケな顔が画面に写っていた。となりのやつは、楽しそうな顔してるよ。写真慣れしてるな。こいつ――っか。俺なんかとプリクラやってるのに、よくこんな笑顔作れるな。そして、何やら操作を始めました、お隣に居る方。


「……っか、加工しまくってね?」

「まあ、いろいろできるんですよ。今のをかわいくしてあげますよ?」

「――それは整形レベル」


 って、プリクラって、こんなに変わるんだな。これは偽物だ。そうしょう。チラリと画面を覗いてみたら、となりで、笑ってるやつは……ちょっと良かったかもだが。

 しばらく、となりで操作していたが、やっと終わったのか「できましたよ」と、言われて、画面見てみるとみたら。確かに、綺麗っか、なんか。いろいろ追加されたような――。


「やっぱ――整形だな」

「かわいくなったじゃないですか」

「偽物の俺を、作ってくれてありがとう」

「えー、結構いい感じですよ?かっこよくなりましたよ?」

「悪かったな。今が悪くて」

「でも、ちゃんとしたら、かっこよくなると思いますよ?」

「ないない」

「えー。そんなことないと思うけどなー」


 何やかんや言いながらプリクラ後に。

 ゲーセンなんて、普段全く来ないから、どう楽しむかなんかわからないので、そのままゲーセン隅っこにあったベンチで、休憩。何気に、16時31分と、結構時間経っていた。プリクラだけで。いや、プリクラ疲れるわ。二度と来ない。あ、来れないか。


「なかなかいい写真ですね」

「いつまでみてるんだよ」

「いや、こんな、経験なかなかできないですから。死ぬ人とゲーセンとか」

「だろな」

「こういう最後もいいと思いますよ?」

「今死んでもいいわ。プリクラもういい」

「疲れるの早すぎません?それに、今自殺されても、数時間あなたの苦しむ姿を見てるだけは、嫌だから、やめてください」

「……ほんと前暇だったんだな」

「暇というより、苦しむのだけ見せられてもですからね。わたし居る意味ないのに、対象者の人生きてる限りいないといけないんで」

「ほんと大変、で、その記憶は残ると」

「はい、だから今のあなたとの記憶は、かなり良い記憶です」

「さいか。まあ――俺、拷問だったが」

「えー、初恋の人とくっついてプリクラですよ?」

「中身おまえじゃん」

「――――ですけどー。中もちゃんと女ですよ?」

「男だったら、マジ今死ぬわ」


 それから、飲み物飲みながら、あーだ、こーだ。なんか話していた気がする。

 ゲーセン来て、プリクラのあと、ベンチで話してただけだな。まあ、いいか。2回目のプリクラよりはるかにマシ。案内人も、話している時……それなりに楽しそうだったから。良いだろう。

 っか、見た目は、完全に、中学の頃の――長瀬ながせなんだよな。今のこいつ。

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