第12話 14時33分

 歩きっぱなしも疲れるので、しばらく歩いた先で、見つけたファミレスに入る。


「お腹すきましたか?」

「いや、行くとこないから休憩」


 そういいながら、定員さんに、案内された席に、2人で座る。


「じゃ、飲み物でも、飲みながらあなたの過去話してください」

「やだよ」

「じゃ、私がいろいろ聞くから答えてください」

「面倒だな」

「親には会いに、行かないんですか?」

「無視されたよ。まあ……多分いないから」

「はい?」

「忙しいからな。下手したら海外いるわ」

「――えっと、連絡は?」

「しないからな。便りがないは、なんやらだよ」

「――――嘘?」

「いや、あいにくこれは事実。嘘なし」


 これは、本当のこと。多分ではなく。本当に、海外に居るかもしれない。そんな親である。話すとかいうのも、数か月はしてないが。まあ、会ってないし。電話なんてほぼほぼしないし。でも、俺が、生活に困ることがないように、毎月支援してくれている。


「うーん。あとは……じゃ、好きな人に会わなくていいんですか?もう、会えないですよ?」

「いないから問題ない」

「……彼女は?」

「いるわけないだろ。いままでの話聞いてた?」

「まあ――ですよね。よかったです」

「待て待て、よかった。って、なんだよ」


 さらっとこいつ酷いこと言うよな。


「あっ――これは、失礼」

「いい性格してるな……ホント」

「でしよ?」

「なかなか。っすわ」

「じゃ、初恋は?」

「……初恋は――――ないな」

「間がありましたね」

「うるさいな。記憶を思い出してたんだ」

「なるほど初恋の人は、いる。と、これは、取り調べですね」

「なんか……グイグイきて、っか、楽しんでるよな。おまえ」


 ちょっと、案内人。前のめりになりました。やっぱ中身は、女子なのだろうか。こういう話好きそうだもんな。女子。と、勝手な俺の考え。違ったら、ごめん。


「初恋は、だれですか?」

「なんで、言わないといけないんだよ」

「気になるじゃないですか」

「知るか」

「じゃ、その子どんな子でした?」

「――――知らん」

「はっ?」


 めっちゃ冷たい声が聞こえてきたよ。


「いや、怖いから……でも、知らん」

「いやいや――初恋の人でしょ?」

「……ほとんど話した事ないからな」

「――――さすがぼっち。遠くから見てたんですね。ちょっと、怖いですが。で、誰ですか?」

「えらい気にするな」

「気にしますね。何度も言いますが、楽しいですから」

「前のめりになって、聞くような話しかよ。俺の話が」

「気になります。あなたみたいなぼっちが、好きになった人」

「ひどい事言われた気がする。でもな、話したのは、数回だけだ。それに……」

「……一目惚れ?」

「いや――そんなんじゃ……」

「はいはい。にしても、数回?アタックしなかったんですか?」

「いなくなったよ」

「――――いなく……なった――?」

「なんだよ。黙るなよ。まあ、あんまり楽しい会話にはならないぞ」


 初恋やらやらの話は、普通は、楽しい?みたいな、明るい話なのかもしれないが。俺の場合は……と、か、思い出していたら。


「あの……それって――中学?」

「うん?よくわかったな。って、うん?あれ、俺中学とか言ったか?」

「なっ、あっ、あーいや、なんとなく、なんとなく。じゃ――わかりました」

「なにが、わかったんだよ」

「なにも、思い残す事ない。と、言い切るあなたは、初恋の未練があるのですね」

「――ないよ」

「あります。だから、わたしが演じてあげましょう」

「はっ?」

「演じてあげます」

「はっ?」

「むっ。同じ反応ですか。喜びませんか?」

「はっ?」

「……怒りますよ?消えますよ?」

「消えるのは、ごめんなさい」


 案内人ついに壊れたか。俺の人生が残念すぎるのか。暴走し始めた様子。あちらの世界の方。こちらの世界で、暴走してますよ。あっ、時間は――14時33分。俺言いましたよ?出来れば、早めに止めていただきたいが――雰囲気的に無理か。


 あの日のことは、あまり思い出したくない方の、記憶なので。

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