第6話 08時39分

「最後の晩餐。と、いうのか。食事は、後3回はあるのか」

「まあ、日付変わって、すぐの可能性もありますし。もしかしたら後6回かもしれませんよ?明日の夜かもしれませんから」

「まあ、腹減るとイライラしそうだから。まず、朝なんか食うか」

「何かあるんですか?全部捨ててませんでした?」

「あー、たしかに、まあ、どっちにしろ今日の朝なかった気もするが」

「あなたの生活、心配すぎますね」

「いいんだよ、俺は」

「……もしかして。と、いうか、何となく感じてましたが。あなた――死にたかった?」

「まあ、死んでやる!はなかったが。結構前から。どーでも。って、感じだな」

「……なにかありました?」

「些細なことさ。おまえに話しても、笑うだけだ」

「……そうですか」

「とりあえず、なんか食べに行くか。って、おまえ食べるとかはできるのか?」

「一応、できますが、今のままだと、食べ物が浮いて、消えるをあなた以外の人が見ることになります」

「なにそれ、騒ぎじゃん。やめてくれよ。そういうのは、面倒ごとに、なるからな」

「まあ、私の姿を、誰もが見れるように、したらいいんですけどね」

「できるのかよ。実体化?っていうのか見えるように」

「ええ、はじめに、ああ言いましたが、あれは、すぐ警察やらに言われるとなんで、普段は見えないようにしますが。見えるようにもできます」

「どうやって?」

「そこにある、電気のスイッチの入切みたいな感じです」

「マジか」

「マジです。簡単でしよ?」

「じゃ、まあ、付いてくるなら、見えるように、なったらどうだ?食わないで、見てるだけならいいが」

「私も、こっちの物が食べたいので、見えるようにします」

「……さいですか。っか、おまえも、昔はこっち側だったのか?」

「まあ、そうですが。それは、おいおいで」

「なんでだよ」

「朝ごはん。行くんでしょ?話すと、とっても長くなるので。それに、ご飯の時に、重ーい話は嫌でしょ?」

「そうだが、まあいいか。っか、今まで、散々重くて、グロい話してなかったか?」

「はい、じゃ、その話は、おしまいです」

「……はいよ」


 とりあえず家を出る。もしかしたら帰ってこないかもだが、戸締りだけした


「おまえ。もう周りの人からも見えるのか?」

「はい、普通に」

「そっか。ホント簡単にだな。見た目は……変わってないが……じゃ、行くか」


 明日死ぬ前日に、なに食うか。特に浮かぶものは――あれか。

 目的地に向かう。案内人さんは、普通に付いてくる。どこに行くのか。とかは聞いてこないので、勝手に歩く。そして、しばらく歩くと到着。目的の全国チェーンのお店に。


「……朝からドーナツ。ですか」

「朝のセットあるんだからありだろ」

「まあ、ありですが――でも、意外だなぁと」

「食べないならいいが」

「食べます。私も好きですし。意外といったのは、あなたがあの生活で、ドーナツ屋に来てる。ということが、想像できなかったんですが。あ、私、こっちのお金無いんで払ってください」

「マジか。まあ、いいが。どうせ死ぬんだし。金使い切ってもいいだろ。っか、ドーナツ好きってことは、向こうにもあるのか?」

「はい。一応、でも、こっちでも好きでしたよ」

「なら、よかったじゃないか。こっちの食えて」

「確かに、それは感謝します。普段は、見えないままで、我慢なので」

「それは、それは、つらいな」

「にしても、甘党ですか?あなた」

「甘党って、程じゃないが、ドーナツはな、ちょっと」

「……ちょっと」

「ちょっとだ――――好きだったんだよ……」

「だった?でも、今普通に食べてますよね?」

「まあ、いいだろ。食うぞ」

「……え、あ、はい」


 会計のち、店内で、まあ、女の子?と食う最後かもしれない朝食。

 ドーナツ美味いわ。本当は、中学までは、そこまで、ドーナツとか、甘いのは、あまり食べては、なかったが。前に、ドーナツの事ばかり考えていた奴がいて、その時に、なんか、聞いた俺が、ドーナツの気分になってしまい。お店に行ってみたら。完全に、俺がハマっていたのだ。まあ、だから、すぐ浮かんだのが、この店だった。と、いうこと。

 そういえば、これ、あっちに、行っても食べれるのかな?ドーナツはある言ってたから――あるのだろうか?っか、どんなかんじなんだろうか。やら思いながら、ドーナツを完食。


 正面にいる案内人とやらは、やはり女の子か。綺麗に、お行儀良く食べていた。そして、この案内人も本当にドーナツ好きなのか。ちらっと見た顔は、びっくりするくらい笑顔で食べていた。

 ――もしかしたら、こっち味は向こうにはないのだろうか……?と、思ったので、追加でもう1つ食べておいた。


「朝から食べますね」

「いや、美味いからな」

「――――最期かもですからね」

「誰かの言葉が本当ならな。まあ、本当じゃないと、いろいろ困るが」


 そんなことを話しつつ。追加分も完食。そういえば、周りから変な視線も感じないから、普通に、この案内人とやら、見えているのだろう。注文時も、普通に接客されたし。


「なんですか?人の顔見て」

「ちゃんと周りから見えてるんだなぁと」

「消えましょうか?」

「ドーナツ浮く、消えるとかの現象になるならやめろ。騒ぎにマジでなる」

「それはそれで、楽しいかもしれませんね」

「おまえな」

「まあ、大丈夫ですよ。消えませんから。多分」

「さらにおい!だよ」


 この案内人大丈夫かよ。と、思いつつ。朝食を終えた。


 時間は、8時39分。学校行く日に、なんて優雅。と、いうのか。そういえば、店の前の、人通りも、店に入った時は、バタバタというのか。それなりに、いたが。今は一段落した。みたいな感じだった。普段はあまり見ない、平日午前中の街の姿だった。

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