第53話 最後を迎える俺と案内人 下

 階段を登りきると、そこは、やはり見覚えのあるところだった。


 死ぬ直前に、長瀬に教えてもらい。というか、連れて来られた神社。どこからどう見ても、あの時の神社だ。

 そして、俺が死ぬときに、長瀬と一緒に居た神社で――間違いないだろう。このあたりに、何かあるのだろうか?と、俺は神社の周りを一度歩いてみてみるが、特に変わったところはない。

 裏側も見てきたが、変なところはない。長瀬のいる場所は――ここではなく。また、このあたりに何かミッションが出るところがあるのだろうか?

 俺はそんなことを思いつつ。賽銭箱の前に立った。やはり変なところはない。見た感じは、普通の神社。現実世界で見たものと同じだと思う。そういえば、俺この神社の賽銭箱に死ぬ前に財布の中身全部入れたな。とか。思い出した。

 まさか、それで、あのワンチャンが――?ないな。そういえば、ワンチャンに、聞いた鈴もちゃんとあったわ。えっと……本坪鈴ほんつぼすず……?多分あっているはず。本坪鈴ほんつぼすずだ。覚えた。多分――。


 その時だった。近くから音がした。


 ガン。


 「ひっ!?」


 突然何かが、ぶつかったような鈍い音がし俺は一瞬身体を硬直させる。いや驚くじゃん急にだから。

 でも、そんな音が、するようなところどこにある?と、俺はゆっくりあたりを見る。この周りは――木々があるのと、まだ、唯一見てないところ。本殿?でいいのだろうか。この目の前の建物の中だけだ。

 俺は、賽銭箱の横を抜けて、閉まっているドアの前に。

 こういうところのドアって開けていいのかな?と、一瞬思ったのだが、誰もいないし。そもそも死んでいるような存在の俺。特に――問題はないだろう。と、ドアを開けた。


 すると――普通ならこういう神社の建物の中には、仏像とかがあるはず。とか思っていたのだが。この世界では……何もない。空室というのか。何もない。無さ過ぎて、違和感を感じるレベル。そして、音がしたのは、この中からの可能性が高いはず。そんなことを思いつつぐるっと、見たが……何もない。壁も普通の壁だが、さらに1歩。部屋の中心に入った時だった。


 コツ。


 身体が、何かに触れた?見た感じ。目の前には――なにもないのだが……何かがある?俺の前に。けれど、それは見えてない。

 

 すると、急に背中の方がヒヤッとしたというのか。悪寒?いや――空気が違う?とてもとても悲しい……そんな空気が詰まっているところが近くにある気がした。


「なんだこれ――――」


 何もない部屋なのだが――そこに何かある。この異世界で、いろいろしてきたから知らぬ間に何か能力でも、俺は入手したのだろうか?と。とにかく、何かある感じがした。見えないだけで――何かある。


 なので、俺は、試しにゆっくりと、手を伸ばしていく――すると。


 コツン。


「!?」


 やはり何かある。何もない部屋の中心で手が何かに触れた。

 手を引いてしまったが、何かある。俺は、もう一度手を伸ばす。

 次は少し強めに触れる。するとだ、いきなり。空間にヒビが入る。そして、光が漏れだした。


「うっ。なんだ――まぶしい……」


 ご来光。と、でもいうのか。なんかとてつもなく明るい光のように感じた。誰か居る?神様の寝床でも見つけてしまったのかと思ったよ。

 あと――なんか、やばいものに触れてしまったか。とか思ったが。正体がわからないので、もう一度、光が漏れてきているところを見る。すると、その部分が、脆くというのか。卵の殻だったのか。そんな感じに、パラパラと崩れていく。すると、光が遮られたと、思った瞬間。


「……ぐあ」


 それは、いきなりだった。

 何かが、俺の顔面を直撃した。痛くは――無い。なんか。もふもふの感じがして、俺の顔面に当たった何かは、俺の足元に落ちる。そして、それを見て見ると――。


「ぬいぐるみ……?」


 そして顔をあげると、今度は完全に見えていなかった空間が、見えるようになっていた。


 そして、俺の正面には、どうしたのだろうか。とっても疲れているというか――ボロボロ?いや、大泣きでもしたのだろうか?という顔をしている――。


 ……長瀬が立っていた。


 ◆


 多分、こういう時こそ、この言葉を使うのではないだろうか。目が点。の状態で、長瀬が立っていた。


「……何してるんだ?」


 俺はまず、そう聞いた。いや、少しぶりと思うが。会う人にこの言葉で会っているのだろうかはわからないのだが――――。

 そして、殻?なのか、見えてなかった壁?がパラパラと、全部なくなると――神社の本殿の中のはずだが。殻?壁?のあったところから奥は、誰かの部屋?みたいな感じだった。これどうなっているのか――って、異世界だからで片付くか。


「……忍海――君?」

「一応?だな」


 やっと、長瀬も、俺を認識したのか、話出した。と思ったら。急に長瀬がこちらに走って来た。そして――タックル。


「ちょ――ぐはっ」


 いきなり。人が飛んできた。そして抱きつかれました。危うく、後ろに倒れるところだったよ。


「――うぅぅ。ご、ごめんなさい――――ごめんなさい……」

「――えっと……はい?」


 人にタックルのように、飛んできた長瀬は、俺に抱きつくなり。謝りだした。って、いうか。この状況は――何なのでしょうかね。とにかく、恥ずかしい。あと鼻水服で拭くなよ?駄洒落じゃないぞ?なんかボロボロの表情だからな。とりあえず――だ。


「……と、とにかく――一度離れてもらえないでしょうかね?」

「うっ……うっ――あっ――」


 今度は、俊敏に長瀬は離れて、し距離を取った。泣いていた目をこすってから、こちらを見てきた。なお、ボロボロの表情だな。涙止まってないし。


「……そ、そのこっちに、居るってことは……忍海君も、死んだんだよね――って、なんで――ここに?」


 長瀬が下を向きながら話し出した。申し訳なさそう?な雰囲気いが漂ってる。


「いや、まだ生きてるみたいだけど、現実では」

「そうだよね――私が、馬鹿なことして……えっ?忍海君――えっ?生きてるの!?」

「らしいよ。神様みたいなんが言ってた」

「神様と話したの!?」


 俺が答えることに対して、結構いいリアクションで、返してくれる長瀬。元気だな。泣いているけど。


「そう、で、なんかミッションこなしていったら。長瀬のところ行けるとか聞いてさ」

「私の……ところ?」


 長瀬がつぶやいた時だった。


「おー、若いの。びっくりする速さじゃの。たまげたわー」


 いきなり天井?から声がした。


「誰!?」


 長瀬は、キョロキョロ周りを見つつ、俺の横にぴったりと並んだ。そして腕を掴んできた。なんというか――いいか。長瀬だし。


「とりあえず、クリア?神様」

「そうじゃ、そうじゃ、びっくりじゃ。何百日と、かかるかと思っておったのじゃが。まさか数日で、たどり着いて見せるとは、そなた、なかなかじゃの。まず、現実世界に、戻るだけの価値があることはわかった。じゃ、最後のミッションじゃ。そなたが、現実世界に戻るために、問題児の娘を――――殺すのじゃ」

「……殺す――?問題児……もしかして、私を――忍海君が?」


 隣から視線を感じるが、長瀬は離れたりするということはなかった。なんか、受け入れます。見たいな感じも隣から、俺は感じ取っていた。


「途中で、武器を手に入れたじゃろ」

「あー、この弓」


 俺が言うと、弓が出てくる。ホント便利な世界。現実もこんなんだったら少しは面白かったかもしれないが――。


「ふぇ!?!?」


 隣で長瀬の驚く声が聞こえた。って、お前も、自由になんか出せるんじゃないのか?なんで驚いているんだよ。


「その弓には、力が宿っておる。その弓で、その娘を射抜けば、若いのは、現実世界に戻してやろう」


 神様思われる声が、天井から響くと、隣に居た長瀬がなんとも言えぬ表情で聞いていた。


「……忍海君――これ、どういうこと?私……殺されるの?忍海君に」

「殺されるの?と、聞いている割に、近くに居るよな?」

「あっ――それは……」


 まるでどうぞと言わんばかりの長瀬。


「いやさ、今の声の人曰く。多分神様なんだろうけど。なんか俺、まだ生きてるらしいんだよ。現実世界で、その映像?見せられたし。病院で、包帯ぐるぐる巻きだった」

「えっ?でも……忍海君ここに――居るよ?」

「なんか、長瀬が暴走してたからやらで、神様が俺の最期。終活?が案内人により、妨害されたか、なんか知らないけど、とりあえず、こっちの者が、悪いことしたから。チャンスやると言われたんだ。で、地道に、なんかいろいろやって、ここまで来たという事」

「……私を――殺すために?」

「まあ、俺が現実に帰るためには、そうらしいけど」


 そういえばなんかそんな話したか?って、異世界いろいろあってなんかこんがらがっているわ。頭の中が。


「……そうか――仕方ないね。でも、まだ、帰れるんなら……私はいいよ」

「――いいのかよ」


 あっさり許可出たわ。


「うん。私が悪いんだし……死んでるのに、ちょっと、いろいろやっちゃったから」


 長瀬は少し俺から離れた。弓だから、近いのは難しいとか、勝手に思ったのだろうか?適度な距離だな。すると、また天井から声がした。


「若いのどうした?あまり時間は、ないぞ?この場所に、付いてから、一定時間すると、そなたが失敗するしない関係なく。現実世界のそなたの命はなくなるからの」

「忍海君。早くしないと!私は、いいからさ」


 神様の声に反応した長瀬が慌てて声を――だったが、それと同時に長瀬の目からまた涙が見えた。

 現実世界に来ている時のこいつ、俺の過去聞いても、悲しいとかいう割に、泣かなかったのに。こっちではボロボロだな。などと再度俺は思いつつ。

 あまりこの時間を長くすると、長瀬に悪いので、俺は、最後確認を神様にした。


「確か――俺が失敗したりしたら。永遠に、この世界に、俺も彷徨うことになるんだよな?」

「そうじゃ。すでに、ミッションを開始した時点で、リセット期限は、過ぎてるからの。別の魂として、現実世界に、来世以降一切行かなくなり。このまま、年も取らず。この世界にとらわれるのじゃ」

「――――了解」


 俺は、弓をで持った。すると、長瀬が目をつむるのがわかった。

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