第44話 22時01分

 ここからは、初めて読む場所だ。


 現在の俺は、数年ぶりに中学の時に読んでいた物語の続きを読みだした。読むのは、そこまで、早くはないと思うが。読みだすと、中学の時の記憶が、蘇ってくるという感じで、次、次。という感じに、どんどん読み進めていった。隣に居る、長瀬には申し訳ないが。しばらくの間黙々と読んでいたと思う。長瀬は、長瀬で、ずっと横に座っていた。


 結局2時間ほど、かかっただろうか。俺は、最後のページを閉じたのだった。


 ◆


 物語は、ざっと話すとこんな感じだった。


 最後のミッションへと向かう2人。はじめの頃は、すぐ終わると思っていたことだったが、すでに、2年と201日経過していた。移動が徒歩しかなく。また、道中もすんなりとは進めず。最終目的地を知ってからも長い旅をしていた。けれど、その道中の2人とても幸せそうだった。

 ちなみに、なぜこちらに、異世界に来てからの日数が正確に理解できているかというと。女性の方が日記をつけていたから。

 時間とかはわからない世界だったようだが。暗くなったら。日記を書くということをしていたかららしく。物語では、それほど多くは、登場しなかったが。重要なところとかでは、日記の存在が出てきていた。

 とまあ、それだけの歳月が経っていれば、2人は話さなくとも、お互いの行動がわかる。という感じで、物語は進んでいく。


 どんどん仲良くなるというか。一緒に強くなる。互いを再認識しあっていく。2人を見ていると、この後に、あるであろう、最後のミッションも乗り越え、現実世界に戻り。とか、思って読んでいたら。


 ……最後のミッションは、迷い人1人をにする必要があった。


 そこで、2人は記憶が蘇って来たというのか。俺も記憶がよみがえって来た。そうだどうだ。確か1巻。はじめの頃にあった神様のセリフを思い出していたのだった。


『2人協力して、神の地にある扉を開けよ。2人居なければ助からない』


 なるほど、2人とも助かるとは言ってなかった。そして、1人で行くと、この最後のミッションがクリアできないから――か。


 最後のミッション。それは、扉を開けるためのカギは――1人の迷い人を捧げること。


 女性の方は、泣きながら「一緒に残ればいい。もう2年以上。この世界に居たんだから」など、と、言っていたが。男性側がほぼ無理矢理というか。俺が居たことをを現実世界で覚えていてほしい。みたいな感じで、女性の腕を払いのけて、自分が犠牲となる道を選んで、その後、1人になった女性の前のドアが開いたのだった。


 ◆


 すぐに女性は1人になった。しばらくは、動けずにその場にしゃがみこんでいた。それでも、彼との最後の約束。それを守るために、と。ゆっくりとドアをくぐる。と――。

 2年と数か月ぶりに、現実世界で女性は目覚めた。

 そして、少し前まで、彼も生きていたが。女性が目を覚ます、少し前。ほんの少し前に――息を引き取ったことを家族から聞いたのだった。


 それから、彼女は1人。と、なってしまったが。立ち止まるということはなく。彼の生きた証を残すために、現実世界での新しい生活へと、歩みだした。と、いう感じのストーリ―だった。

 って、俺が勝手に割愛しているのでいろいろぶっ飛んでいるがね。とにかく。そんな感じだったということだよ。ちなみに俺の頭の中ではもっといろいろな感想が回っているが――人と話す機会の少なかった俺。言葉にするのが下手だった。仕方ないな。


 ちなみに、何というのか。こういう展開は、ありといえば、ありな気がする。

 すると、俺が読み終えたのを待っていました。という感じで、長瀬がこちらを見ていた。

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