第42話 20時03分
神社に来てしばらく。あたりは、すっかり暗くなった。少し前はカラスとなんかの鳥の鳴き声がしていたが。今はそれも聞こえなくなっていた。
また、神社に来た際に上がって来た階段あたりは街灯もなく真っ暗。
ここからでは。はっきりは、見えなくなっていた。賽銭箱の前に、居る俺たちのところだけが明るい。ぼんやりと見える、手洗い場のところにある時計は、20時03分と、ちゃんと進んでいるらしく。時刻を刻んでいた。進んでいるが、正確とは――言ってないがね。
「じゃ、ここからはどうするんだ?長瀬の話でも、聞かせてくれるのか?」
「なんで、そんなにグイグイ、言えるんですか?普通。ぼっちで、いじめられっ子は、女の子に、こんなにスラスラ話せるとは、私は思わないのですが」
「やっぱり、結構ひどいこと言われてないか?俺」
「言いました」
「認めたよ、っかさ。2日間も一緒に行動していたら……それなりに、話せるよ」
「そんなもんですか?」
「特にはじめ、長瀬は、単なる案内人、人間とは思ってなかったからな」
「人以外の物を、信じる人でしたか、忍海君は?」
「いや、全く。でも、長瀬の行動っか。変身やら見たら、あー。こいつ何か、違う人だ、ってことくらいは理解した」
「……ホントは、ゆっくりでいいから、こちらの世界で話したかったですね」
「だから、こんなメモを本に挟んでいたと」
持っていた本を開く。っか。これどうしよう――?
「ちょ、今出します!?見せなくていいですから!」
するとまた怒られた、というか、長瀬が人1人分ほど、近寄ってきたため。本当に鈍器で一発されたら死ぬ距離なので大人しく本を閉じる。
「――でも、この本のことで、話したかったのは、本当です」
すると、ボソッと長瀬がつぶやいた。
「ほかに居ただろ?俺なんかより」
「いえ、図書委員ってなりたくてなったのって、私くらいですよ。あっ、そうそう、良いこと教えてあげます」
「なんだ?死ぬ前の人間に」
「中2でしたっけ?部活に入れと、あなたに先生が言ったのは?ですよね?」
「うん?あー、多分そうだが、って、なんでその情報を長瀬知っているんだ?」
「だって、あなたの担任の先生から、あなたが図書室でどのように過ごしているか、聞かれたことありますから」
「――マジか。あの担任、俺に関わってこないようになったかと思ったら……周りに聞いていたか」
「ですね。変わり者さん」
「あの担任の方がおかしいだろ――部活強制とか。他の先生ではなかったぞ」
「まあ、確かにそうですけど、先生も、あなたのことを、気にしていたのですよ」
「っか、これのどこが良いことなんだよ?」
俺的には別に知らなくてよかった気がするが――。
「私だけが知っていた、ちょっとした、良い事。みたいな?」
「――だから俺的には、良いことに、思えないのだが……」
「まあまあ、って、えっと――何の話でしたっけ――?あ、そうそう。本のことですが」
「無理矢理変えたよ。話題を、って、戻ったな話が」
「こっちが本題ですから」
「のわりに、自分からそれたと」
「いいんです。で、忍海君も気が付いていると思いますが。図書室ってどんなイメージですか?」
「えっ?うーん。静か。人いない……とかか?」
「まあ、そうですね。たまたまかもしれませんが。中学のあの時は、図書室って、利用者がとても少なかったんです。それもあってなのか。図書委員もなりたくて、なった人は、ほぼいなくて。で、ちょっと、本の話をしたくても。その、私の周りは、そもそも本読まないから。みたいな感じでしたので。だから、あの時、忍海君を知ったのは、ちょっとうれしかったんですよ?」
「俺、偶然ああなっただけだがな」
「でも、その偶然で、私は、本について語れそうな人を見つけました」
「……けど――それができなかった」
「まあ、そうですね。死にましたから。そういえば、忍海君。その本読んでないんですよね?」
「だな」
少し前にも言ったが。俺本当にこの本読んでないんだよな。
「じゃ、読んでくださいよ」
「は?」
「その巻が、一応、私の知っている限り最後ですので。今はわかりませんが――」
「あ、そうだったのか」
「知らなかったんですか?」
「ああ、記憶的には、いい感じというか。中学の図書室にこんな、なんていうんだ?異世界モノ?みたいな話があるとか思わなくてな。ちょっと読んだら面白くて読んでいたが、そうか。終わりだったのか。これで」
「気にならなかったんですか?2人がどうなるか」
「そりゃ気になっていたけど――さっきも言ったけど、なんか、そのあと、長瀬居なくなって。この本触れなくなったからな。なんというか」
「――なんか私のせいみたいですね」
少し長瀬の頬が膨らむ。いや怒られても――いや、拗ねられても?ね。
「そうは言ってない」
「じゃ、読んでください。そして、私の小さな目標達成させてください」
「俺の最期の為の案内人だったのでは?」
「――いいんです。忍海君、聞いてもないない。言ってましたから」
これ――まるで長瀬の最期みたいだな。と、俺は一瞬だがそんなことを思った。
「――っか、読んでいる間に俺死なないか?」
「あと、3時間くらいありますから、私が止めれることは止めます」
「止めれるのかよ――」
もう何でもありだな。っか、初めからわかっていたことか。何でもありだわこいつ。
「わかりませんが。とにかく読んでください。そして――感想を聞かせてください」
「――まあ、することないし。いいが」
それから俺は本を開く。そして、明かりがあたるところにちょっと移動、っか、長瀬に、近づく形になったが、大丈夫だろうか?隣になった長瀬は、早く読め。と、いうような顔をしているが――俺、突然終わり来ないよね?読みだしていいところで――ぽっくりとか。
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