第9話 11時36分

 駅の改札前。自動券売機のところに居るのだが。お隣さんは、もちろんお金は無い。が、ちゃんと、切符買い電車に乗るつもりらしく。一緒に、券売機の前まで来ている。


 ◆

 

 これは先ほどの会話。


「こういう時は、もう一回消えたらどうだ?」

「ずるいから、いやです。普段は、見えないままですが、今回は、一度姿見えるようにしたので」


 だそうだ。真面目なのかなんなのか。


「スイッチみたい。って、言ってなかったか?簡単そうな感じに」

「いいんです。ほら、切符買うんでしょ?行きましょう」

「……はいはい。こっちな」

「はい、ありがとうございます」


 それから、購入した切符を、案内人に渡して、駅のホームで、電車待つ。昼前だから、駅は空いている気がする。


「小学校では、どんな子でしたか?」

「記憶ある限りでは、ぼっち」

「すでに、ですか」

「っか、仲間外れだったな。ずっと」

「……ずっと――ですか」

「ああ、中学もだし。っか、小学校から中学校は、複数の小学校が集まるだけだから。仲間外れにされっぱなし。まあ慣れたけど」

「あの……それって――――いじめですか?」

「知らん。まあ、楽しかったんだろな。周りは、いじめか知らんが、仲間外れにして笑う。俺は、1人を楽しんだが」

「……楽しんでました?ほんとに」

「楽しんだ楽しんだ。先生も見て見ぬ振りだから、楽だったよ」

「――――ちなみに親は?」

「仕事仕事で、あまり興味なかったんじゃなあか?今だから知ってるが。一番会社が急成長してるピークだったみたいで、会社が楽しかったんだろ。家でも1人当たり前だったし。でも、俺ちゃんと育ってるから、親には、感謝しないとな」

「……そうですか」

 

おかしいな。俺の話をしているはずが、隣に居る案内人の表情がどんどん暗くなっているのだが――俺が原因……?だよな。


「なんで、おまえが暗くなってるんだ?」

「……寂しそうで、過去のあなたが、とても」

「いやいや、かえって楽だったぞ?」

「でも――小学校って結構いろいろと行事とかありましたよね?」

「あ、そういう時は、仮病な」

「……仮病」

「そう。前日からな、イベントあると、体調崩す。みたいな」

「…………それで、よかったんですか?」

「いいだろ。誰も文句言わなかったし。居たら笑われ。居なかったら居なかったで、何もなく、終わるんだから」

「ちなみに、小学校言えば――運動会とか出ました?」

「2年以降は、知らないな」

「……ほぼ全部じゃないですか。でも、1回は出たんですね。どうでしたか?」

「いや、どうせ親忙しいやらで来ないし。お昼は、先生と居るとかも、1回したら十分だわ。1年であれは、なかなかしっかり記憶に残るわ」

「それ以降は――仮病で?」

「だな。あ一、1回だけガチで、出れなかったパターンもあるな」

「うん?それは、なぜですか?風邪でも引きましたか?」

「学校で、階段から落とされて、骨折してな。あー、ヒビかなんかだったっけな?」

「……酷い」

「まあ、実際は、俺が、ボーっと歩いてて、落ちたになってるがな」

「さらに、酷いじゃないですか!」

案内人。結構な声で、言うもんだから。俺、ちょっと周りを確認。

「ちょ、騒ぐな目立つだろ。なんで、お前が怒るんだよ」

「あ、すみません。つい」

「おまえ、良い子ちゃんだったか?」

「普通ですよ。静かな方だったと思いますが。みんなと仲良くしたい子でした」

「そりゃ、いいことで…………」


 ――その時、そういえば、こいつもわけわからないまま、死んだのか。と、ふと思った。こうなっているんだから。実際。


「あなた、なかなかな、経験してますね」

「……そうか?ぼっちなだけだろ」

「……そうなのかもしれませんが。でも、」


 そこで、やっと電車が駅に来たので、2人乗り込んだ。やっぱり時間的になのか、空いている。


「――そういえば」


案内人は何か思い出したかのように、話し出した。


「なんだ?」

「不登校とかには、ならなかったんですか?」

「仮病で、休むはあったが、不思議なことに、不登校はないな」

「……ある意味。あなた強いですよね」

「慣れるさ、毎日なんか言われてる。ただそれだけなら」

「誰もあなたに――声かける人いなかったんですか?」

「ないな。ない」

「そうですか」

「おまえみたいなんがいたら、声かけてきそうだな」

「――――ないですよ……知りませんでしたから」

「知りませんでした?」

「あ、いえ。その……あ、私も多分、だろうな、って、のはみたことありますよ?でも、何も出来なくて、で、今これですから。早々と死んでます」

「そういやおまえ、どうやって死んだ?」

「あの、それ車内で聞きますか?周りから変な目で見られますよ?」


 数人しかいないが、ちょっと視線感じたのは確か。聞くには、場所が悪いな。


「たしかに、また、あとでだな」

「ちなみに、わたしが今姿見えなくしていたら、あなたは、独り言を話し続けていた。となります」

「……マジ?やめろよ」

「気にするんですね」

「するだろ、一応、最後に、やばいやつに、見られるのもだからな。今時は、どこで撮影されてるかもわからないし。知らないところでネットに、載せられてるかもだし。警察やら呼ばれたらさらに面倒だろ」

「……結構気にしてますね……大丈夫です、切ってませんから」

「当たり前だ、切るなよ」

「さあ?」

「おい。いい性格してるな、おまえ」

「切りますよ?」

「やめてください。ごめんなさい」

「なんか、楽しいですね」

「……楽しくないから」


 それから、1時間ほど、電車に揺られて、小学校に、1番近い駅に着いた。そこからは徒歩移動だ。

 駅からは、遠くはないが。それなりには学校まで、離れているので、しばらく歩く。隣からは、ずっと声が聞こえてくる。


「ホントに、友達いないんですか?」

「いない」

「1人も?」

「いない」

「実は、とても仲のいい親友がいるとか」

「ないない」


 そんな、いない。いない。の会話をしながら、歩いていると。久しぶりに、自分の卒業した小学校が見えてきた。特に変わってないみたいだ。昔のままである。校舎も変わってない。校舎の上の方にある時計もちゃんと動いているみたいで、11時36分を表示している。もうすぐお昼の時間か。いや……4時間目が始まる前くらい?など、と、ちょっと昔の時間割を考えていたが。昔すぎて、出てこなかった。

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