第24話 02時21分

 中学2年のある朝、俺の人生の中では、初めてと言っていいほど、楽しみだった日だ。普段は、学校行くときなんて、何の楽しみもなかったが。今日は違った。今までとは、全く違う感じというのか。体が軽い。学校に向かう足取りも、いつもより軽い気がする。


 理由は、前日図書室に、いつものようにいたら、最近少しだけ話すようになった、図書委員の女子生徒が本を貸してくれるという。そんなことで、と思うかもしれないが。そもそも学校で俺に話しかけてくる生徒が皆無の中。あの生徒は、俺のことも、普通に話し相手の対象と、見てくれている気がした。まだ、数回しか話したことはなく。まだ、名前も知らないが。直感で今までの人とは違う。と思た。

 ちなみに、本を貸してくれる。というのは、偶然昨日の、下校時間間近に、向こうから提案してきた。


 俺は、いつものように、自主活動というのか。放課後は、図書室に居ないと、担任が、どこで見ているかわからないので。そして、図書室に居て何も本を読まないで、座っているだけは――なので、少し前から、シリーズ物の本を読んでいた。

 そして、昨日。読み終わったので続きを借りようと、受付に行ったら、続きが貸し出し中で、仕方がないので本が返って来るまで。もう1回同じのを読んでいるか。とか思っていたら。昨日の、図書委員がちょうど、その女子生徒で「私、家にこのシリーズ持ってるから、明日貸してあげるよ」と、言ってきた。かなり意外なことで、びっくりした。なんで、俺なんかに、自分の本貸してくれるんだろうか?とか、思い。聞こうとしたところで。チャイムが鳴った。下校時間になったこともありバタバタ。けれど、その中でも女子生徒は「明日の朝、図書室前で」と、だけ、俺に言い。女子生徒は、片付け作業を始めていた。


 俺は、邪魔しては悪いと思い。その「明日の朝、図書室前で」という言葉だけをしっかり覚えて、図書室を後にした。


 ★


 そして、翌日。つまり今日。いつもより早く、登校し。図書室前で待った。


 ――――待ったが、女子生徒は、来なかった。この時には、俺は、朝家を出たときのような気分はなくなっていた。


 朝のチャイムがなり。俺は口約束だし忘れたのかもしれない。または、朝は、都合が悪くなったのだろう。と、思い直し。放課後に、図書室へ行くことにした。

 まあ帰宅部扱いされないように、図書室通ってるのは変わらないから。毎日図書室に、行くのは、決まっているのだが。今日は理由が違った。そして、あの女子生徒も、図書委員じゃない時も、図書室で見かけるので、今日も、放課後は、来るだろうと、俺は勝手に思っていた。


 そして、普段なら、ぼーっと、何となく過ぎていっていた授業だが。今日は、長い長い授業時間に感じた。

 特に、昼休みの後。午後からの時間は、特に長く感じた気がする。一度、もうすぐ放課後か。授業中に時計を見たら。まだ14時21分。授業の真っ最中だった。今まで、授業中に時間などあまり気にしなかったが。ちょっとしたことがあるだけで、こんなに早く終わってほしいと思うのか。と、自分にびっくりした。


 それからしばらく。我慢ではないが。授業を受けて。放課後になると。俺は、いつも通りだが。ちょっと、小走り。みたいな感じで、図書室に向かったのだった。

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