第23話 01時22分

 俺の人生最後の日が始まった。


 まさか、最後の日が、わかった状態で迎えるとは、思わなかったが。ちなみに、とくに、死ぬのが嫌だ。とかはない。また、頭の隅の一部でやっとか。と思う自分もいた。


 少し案内人と話していたらあっという間に時間は過ぎていた。日付変わってしばらく、身体に……全く変化はない。

 なんか、あるのか思ったが――本当にとくになし。身体が重くなったり動かしにくくなったりするのかと思ったが。それもない。隣では普通にベッドに寝転びくつろいでいる案内人がいる。


 なにやら、あっちの人間だから、寝る必要はないが。寝ることもできるし。そもそも、横になるのは気持ちいいらしい。

 転がってる姿は――なんか小動物みたいでかわいい。とか言ったら怒られそうだから言わないが。コロコロしている。


「――っか、おまえ、風呂は?」

「あ、入りますよ?一応あっちにも、お風呂はありますからね」

「そうなのか」


 どうやら向こうでも普通の生活?らしい。


「あー、もしかして、最後に一緒に入りたいとかですか?男の子だなぁ」

「そんなこと、言うわけないだろ」

「最後だから、サービス……いや、やっぱ……ちょっと……心の準備的に――無理ですね。ごめんなさい。それは、諦めてください」

「だから断る。っか、聞いてないし。興味ないからな」

「なかなかひどいですね。私結構――かわいいですよ?」


 自分の姿を見つつそんなことを言われてもね。


「はいはい。変身得意ですからね。じゃ、シャワー行ってくる」

「雑な扱い!あ、こけたり。急にお湯かけて、心臓止めないでくださいね。マジで、死にますよ。私が大変になりますから、後処理が!」

「わかったわかった。俺はおじいちゃんか!」


 そんな話をしてから、風呂入る。そこそこ、いい広さのある風呂場だった。なお、言われた通り慎重に行動した。俺真面目。

 

 とりあえずシャワー浴びて――心臓止まるとかはなく。普通に気持ちいい。身体に、不調はない。いつも通りだ。本当に俺死ぬのか?

 しばらく、シャワーを浴びてから、部屋戻る。もちろん、案内人さんは、普通に、部屋で待っていた。っか、くつろいで、テレビ観てた。こいつ――なんだろうな。ホント。


「……おまえも、風呂行ったらどうだ?」

「じゃ、私もさっぱり――あ、私がいないからどっか行く。とかして、いなくなっても、すぐ、追いつけますからね?」

「はいはい、寝てますからご自由に」

「覗くのも……」

「しません。はよ、行け」

「なかなか……ひどい扱いですね。ホント、最後ですよ?」

「だから?誰もおまえ狙ってないから」

「初恋の人ですよ?何度でもいいますがね」

「中身が、残念だからな。無理」

「もう!お風呂行きます」

「はいはい」


 それからしばらく、部屋にシャワーの音が響いていた。結構気になる――が、気にしない。気にしない。いや、でも――気になる。

 そんなこんなで、しばらくして、案内人さんが出てきたが。  

 見た目が悪い。長瀬のままだからか。普通に風呂上り姿で、ホテルに備え付けられていた物を着ているが――なんというか。目のやり場に困るというのか。目をそらそうとしたが、周りを見て目に入ったのは、時計が01時22分を指しているだけ。結局、長瀬の姿した案内人に、目線が戻ってしまう――やっぱりこの姿は気になる。気になってしまう。


「――うん?なんですか?見てても、サービスしませんよ?」

「うっさいな。なんも、言ってないだろ」

「顔が言ってました」

「なんだ、それ」

「あっ。髪乾かしてきます」

「はいはい」

「――あー、後ろから襲わないでくださいよ?」

「ないから」

「傷つきますね。抱きしめるくらい……まあ許しますよ?」

「はよ、乾かしてこい」

「はーい」


 とかで、また、案内人さんいなくなった。もしかして、今のがサービスだった?風呂上がりの長瀬――的な。まさかな。と、先程の光景を忘れようと、寝転ぶ。なかなかいいベッドだ。気持ちいい――。

 そして、あまりに気持ちよかったからか。いつの間にか、俺は、過去の夢を見ていた。

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