第18話 20時27分

「新しい服を買ってもらいましたから。デートの続き行きましょうか?」

「は?」

「デート」

「は?」

「なんで、同じ返しなんですか?」

「聞き間違えかと思ってな」


 お店を出て、少ししたら、案内人が、突然言い出した。


「聞き間違えではなく。デートですよ?デートは、長い方が嬉しいんじゃないですか?」

「意味わからん」

「行きましょう」

「なんでだよ」

「ほらほら」

「夜だろ」

「時間ないですよ?あなた死にますよ?早くしないと、楽しい時間。短くなりますよ?」

「……死ぬ言われても、死ぬ前に、したい事ではないんだが」

「いいんですよ。ほら」


 早い店は、閉まりだしていたので。ただ、ぶらぶら歩くくらいしかなかった。お隣さん的には「歩いてぶらぶらもデートですよ」らしい。すると。


「じゃ――――手でも繋いで歩きましょうか」


 何をコイツはいい出すのだろうか。ちょっと、向こうの神様か、誰か知らんが。こっちで、案内人とやら、暴走してますよ。少し前にも、言った気がするが、2回目。現在20時27分。言ったから。早く何とかしてくれ。死ぬ前に、俺の心が死ぬ。案内人がグイグイ来ます。あっち側には、何も届かないシステムなのだろうか。向こうは、神様か、なんかみたいなんなら。今のこちら側の状況見てるんじゃないのか?案内人暴走中だろ。これ。


「…………お断りします」

「ほら」

「お断りします」

「なんでですか?うれしくないんですか?」

「――明らかに目立つだろ」

「今更ですよ?今までも、結構目立っていると思いますし」

「やっぱ目立ってるよな。これ。っか、なら、しなくていいだろ。これ以上目立つ必要はない」

「いいんですよ。さあ、デートですよ。ほら」

「……マジ帰りたい」


 結局なぜか手を繋ぎ歩くことに、これは…………デート?散歩?子守――。

 にしても、ちゃんと暖かい手だったのに驚き。あっちの人間やら言うから、冷たいとか、勝手に思っていたが。温かい手だった。そして、やわらかい手だった。ホントにこいつ――死んだ人なのだろうかと思うくらいに。


 そんなことを、思っている間も、引っ張られる形で、進んでいく。どこ行くんだろこれ……俺引っ張られている?この案内人。行きたいところがあるのだろう――?とかそんなことを思っていたら。とある店の前で止まった。


「じゃ、どうぞ」

「はい?」

「入りますよー」


 何故か、美容院?の前で止まる案内人だった。そして、何故か、店内に入ろうとする案内人だった。


 はじめ、こいつが、美容院に行きたいのかと思ったが、わからぬまま、中に入ると。どうも違う。入ってからの店員さんと案内人の会話を聞いていると。


「このパッとしない人を、何とかできませんか?」


 とか、聞こえてきた。つまり……誰?えっ?もしかして――――俺?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る