第39話 17時06分
それから、微妙な距離感で歩く2人。どこに、行くとかは言っていない。
ただ前を、長瀬が歩いている。って、長瀬よ。お前、俺が急に向き変えたらどうするんだ?俺の最期のために付いて来ているんじゃなかったか?なんで、長瀬に俺が付いていくように歩いているのだろうか。まあ――行先などないから、どうでもいいのだが。
住宅地を抜けて、川沿いを歩いていた。すると、長瀬が話し出した。
「どうしましょうかね。これから」
「――さあな」
「さあな。って、一応、あなたの人生ですよ?」
「と、言いながら、長瀬が、前歩いて、俺が付いていっているだがな」
「あっ――確かに……」
そこで、長瀬は俺の横まで来た。って、これなんか恥ずかしいな。多分――本物で、間違いないんだと思うが。にしても……こんな不思議なことあるのか。死んだ人とまた会って――話しているとは。などと、思いつつ。俺が長瀬を見ていると。
「――なんですか……」
少し怪訝そうにこちらを見られていた。
「あ、いや……」
「――も、もしかして――手でもつなぎたくなりました?少し前まで、その、つないでましたから」
恥ずかしいなら言わなければいいのに――と、思ったが。そんなことはもちろん言わず。
「――それは、ないな」
「なっ、それ。なんか、私が、1人テンション高かったみたいじゃないですか!」
「知らん。っかさ――長瀬の初恋はあるのか?さんざん俺になんかいろいろ言ったが」
「なっ……な、なんで、いきなりそんなことを、さらっと聞いてきますかね?馬鹿じゃないですか?」
「また、馬鹿言われたよ。いや、なんか俺だけ恥ずかしい過去言わされた気がするからな」
「……この人……いじめられっ子のぼっちのくせに――」
「おい、言葉がどんどん悪くなっているぞ」
「誰のせいですか!」
すると長瀬はまた1人歩き出してしまった。俺――このまま動かなくていいかな。と、思っていたら。
「行きますよ!」
「――ど、どこに?」
「誰にも、邪魔されないところで――すこしなら、その気になれば、答えてあげます」
そんなことを言い出し歩き出す長瀬。「はい?」が俺の今の感想だ。っか、その言い方だと、多分言う気ないだろ。
すると、長瀬は俺が付いてきていないのに気が付いたらしく。こちらに戻ってきて――。
「ほら、こんなところで話したくありません。他の人がいるかもしれませんから――」
そんなことを言いながら、長瀬は、俺の手を掴みまた歩き出す。引っ張られる俺。よく引っ張られるな。とか思いながら。
周りを見ると、ちょうど川沿いにあるグラウンドで、スポーツをしていた子供たちだろうか?が、片づけをしていた。
そこにある時計は、17時06分。なるほど、17時までが活動時間だったのか。で、片付けが終わると、多分、こちらに、歩いてくるかもしれないので、長瀬は移動をする。と言い出したのか。とか俺は思いつつ長瀬に引っ張られていった。
ちなみに――なんか今までで一番長瀬の体温が高い気がする。
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