続く物語

 俺が、案内人。とやら言い。突然現れた長瀬に「あなたは、明日死にます」と、言われてから、何年たっただろうか。

 いや、確かに、俺は長瀬があの時に案内人として、言った2日後に死んだか。なんか、予想していなかった最期だったが。っか、その死ぬ数時間前から、主に、案内人。長瀬に振り回されていた気がするが。それはいいか。そしてその後か、神様?からのロスタイムみたいなものがあったから。3日くらい生きていた気がするが。俺の記憶としてあるのは、あの神社まで。あとは、こちらの世界でのことしか、記憶はない。現実世界で、俺がどのような最期だったかは、全くわからない。最期が案内人に振り回されていたから。親とか、っか。最期がわかっていたのに、遺書という選択肢を忘れてて、何もしないでこっちに来てしまったから。大変なご迷惑をかけているかもしれないが――いいか。


 俺の死因は、神社の階段から落ちた。とかになっているだろうと。今は思っている。ともに行動していた長瀬は――そもそもこっちの人間だったから。上手に何かの力が働いているだろう。もしバレていても俺は1人で行動。1人で不法侵入をしたとかそんなことになっているだろうと思っていた。


 ――違ったら……どうしようか。いや、どうしようもならないが。現実世界とは、接点がもうないから。もしかしたら、殺人事件扱いとかになっているのだろうか?とかは、少し考えたことはあるが。ちょっと、気になっていたのは、こちらの世界に、彷徨うことになり。長瀬と話している時に、聞いたのだが。案内人として、現実世界に来ていた長瀬は、俺とともに行動するときに、姿を見えるようにしていた。それは、他の現実世界の人に見えるということは、何かの記録。カメラとかに残っているんじゃないか?と、聞いてみたところ「そういえば、今までは、姿を現すことなかったから――わからない」とか、言っていたので……そこがちょっと、心配には、なっていた。

 もし、カメラとかに残っていたら……と、考えると――騒ぎが、起きていそうと。

もしかして、あの時神様が言っていた、ペナルティーは、これも、含まれていたのではないだろうか?とちょっと、考えた時もあった。

 案内人が、最期を迎える人の妨害をしたというか。それは、注意くらいになるのが、普通じゃないのかな?と、思っていたからだ。

 俺も全く準備してないわけではなく。ある程度のことはして、単にぶらぶらしていたら、案内人に呆れられてか。振り回されていただけ。

 または、俺が届きもしない発信をしていたからかもしれないが――まあ、もしかしたら、案内人というのは、担当者の最期を、絶対邪魔してはいけないとかの決まりがあったら――そりゃ処罰はあるだろう思ったが。

 でも、あの程度で、処分とか神様は言っていたので――もしかして、常時姿を現した事が問題に、なっていたのではないだろうかと。俺は考えていた。


 ちなみに、長瀬に聞いたところ。ちょっと、顔を赤くして「おし……違う。お、美味しいもの――食べたかったから」とか、言ってたが。

 普通は何か緊急時には、姿を見えるようにできるが。常時見せていることが処分の対象になったのではないだろうか。とかまあそんな今となっては無駄なことを考えていたら時間はそこそこ過ぎていた。


 ◆

 

 現在、俺は――異世界。で、いいのか。あのミッションやら、神様に言われ、歩き回っていた世界の……ここはどこだろう。まあ、どっかの丘?山?の中腹のところに、家をもって住んでいる。

 ここは、静かだし。目の前に湖もあるし。夜は星がきれいと、なかなかいい場所だ。そういえば、異世界に居るが基本現実世界の田舎町という感じがしている。モンスターがバンバン出てくる。と、いうのとかはなく。あれから、村の方に長瀬と来てみたら、やっぱり普通に生活している人がいた。そして動物もいた。現実世界と何が違うんだろうかと、違うことを探す方が難しかったくらいだ。


 あっ、そうそう、違うと言えば、物を出現させることができるのは、俺と長瀬だけの能力だったらしい。村とかにいる時は俺たちみたいに、物を出現させている人は居なく。みんな作ったりしていた。

 それを知ってから、俺と長瀬も基本、出来ることはしよう。と、いうことになっている。時間はたっぷりあるしな。

 だって、この世界で年も取らず。ずっと今後もいる可能性がはるかに、はるかに高いから。農作業とかもしてみてもいいかもとか思い。畑も敷地内に作ってある。

 というか。敷地というが、この世界。現実みたいに、あなたの敷地はここまで。と、ピシッとは、決まっていないみたいだから。空いていれば使っていい。みたいな感じで。俺の今居る家なんて、周りは誰も住んでいないから。ほぼ自由。あっ、ちなみに、家は建てれなかったので、設計図みたいなのを頭の中で考えてから――それを思いつつ「家」と、言ったら、こんな今住んでいる木造の平屋の家ができましたってやつだ。ホント、便利。っか、このあたりに村の人が誰か来たら、なんかすごいの建っている!とか言われそうだ。って、俺――無双?なんでもできちゃうよな?

 とまあ、でも、この辺りは、あまり知られてないのか。今のところ、人は見たことがない。動物はたまにいるが――とりあえずは平穏な気がする。


 とりあえず、平和なところに、俺は居るってことよ。とってものんびり過ごしているしている。

 そういえば――隣で、寝ている奴をどうするべきか。俺が作った、ひなたぼっこ用のハンモックに、無理矢理入ってくる形で、密着してきている奴が居るのだが――って狭いな。別にいいが――でもバランスを崩すと。または押されると、落ちるというか2人とも――なので、自然と密着みたいな形になっていたのだが……。


 とまあ、いつの間にか、無理矢理入ってきた奴は、寝ていた。そういえば、これも、言っておかないとだな。

 俺がこっちの世界に来て、長瀬に会うまでは、何をしても疲れることなく。寝ることもなくても。動けていたが、この世界に囚われてから?というのか。こっちで、生活するようになると。便利に物を出す能力はあったが。身体は動けば疲れるようになり。睡魔も襲ってくるようになった。

 やはり、あの時は、特別な力が働いていたのだろうか――?それとも……気合?いや、それはないな。多分何かが変わったのだろう。


 ということで、寝ているお隣の奴の、ほっぺたを指で刺してみる。


「……むぅ……」


 すると意外と、すぐに長瀬は起きた。


「――せっかく気持ちよく寝ていたんですけど……なんで、起こすのかな?桜太おうた君?」


「落ちる。狭いっか、長瀬。本を書いていたんじゃないのか?」

「――」

「うん?長瀬?無視か?」

「……」

「はぁ……」

 

 先に言っておこう。なんかこいつ最近面倒だ。

 いや、最近というか、長瀬と、こうやって1つの家で、生活しだしてしばらくは、長瀬で反応してくれていたのだが。いつだったか。半年くらい前だろうか。突然「いつまでも長瀬。と呼ばれるのは、なんか嫌かなー」とか言い出し。


「…………奈桜なお。本は、どうした?」

「疲れたから休憩。桜太君が1人気持ちよさそうに、庭でくつろいでいたし。混ざりたくなった」

「じゃ、のんびりさせてくれるのでは?俺、昨日まで、ミッションで、山登りしてきたんですが?その疲れありますからね?」

「お疲れ様ー」

「………軽い――」


 ちなみに、ミッションというのは、この世界では、普通にあるらしく、また、俺も誰かにミッションを出すことができる。何かを作ってほしいとか。出しておくと、届くことがある。

 そして、例えば物が届けば報酬を払う。この世界のお金でもいいし。こちらが持っているものなんでもいい。というか基本。みんな報酬目当てという感じではない。誰かのために、困っているから手伝っている。と、いう感じだ。


 ちなみに、俺が山登りに行くことになったのは、長――奈桜が、勝手にかわいい子がミッション出していた!とかで、持ってきたから。たまに、なんかするんだよな。こいつ。困った奴だ。


 まあ報酬が、手作りチーズと、なかなか美味しいものだったがな。でもミッションがね――山にある薬草を探してくる、という半端なく大変なやつだったんだよ。だから、今日はのんびりしていた。


 そうそう、奈桜が書いている本というのは、この世界には、本がない。文字はあるのだがね。本というものがな。なので、本がないのは「楽しくないよ」と、奈桜が、ある日言い出し「無いなら自分で、書いてみんなに、読んでもらえばいいんだ」とか、言い出した。

 そりゃ、時間はあるからいいんだけどさ。何か見つけないと、この世界で、ぐだぐだするしかなくなるから。にしても本を作るとはね。


 ちなみに、紙は作っているよ。俺がな。作れるもんなんだね。紙って。でも、印刷機なんて、無いから大量には、無理でしょ?と、思うだろうが、異世界なめてもらっては困る。時間はある。たくさんある。

 

 そう、俺が手書きでコピーをする。マジかー!だよ。全部手作りだ。

 

 紙は巻物みたいな感じにしている。何時代だよ!だが。それっが一番楽というか。本の形にするのがね。それこそ大変というか。巻物の方が楽だんだよ。ってことで、なんか作っているんだよ。めっちゃ疲れるけど。学校でもあんなに文字書かないよ。ホント。そして間違えると怒られるから――集中力も必要。なかなかだよ。


 そして――今は何だったか。2人の人と、犬だっけ?がとある駅で生活する話だったかな?こっちには、駅。電車などがないが――「話の中では。なんでもありでしょ?」と、奈桜は言いながら、楽しそうに書いている。まあ、書いている姿見ているのも結構好きなのだが――とても幸せそうな表情で書いているからな。


「……桜太君?聞いてる?」

「あ、ごめん、考え事してた」

「むー。また――現実世界の事?」

「そうそう、誰かさんが、遺書も何も書かせてくれず、本読ませてきたから、俺の死んだあと騒ぎになってないかな――とか。今更だけどふと」

「それ、前も言ってたよ。って、桜太君は、言いたくない時があるとき。それを理由にするよね?一緒に住んでいたらわかるからね?」

「――あっ、はい」

「つまり、違うことを、考えていたと」

「まあ、いろいろだよ、っか、今の方が平和だから、現実世界の事考える時間かなり減ったな」

「……桜太君は、悲しい思い出しかなかったはずなんだけど、いつまでたっても過去の事考えるよね?」

「なんか棘がありませんかね?」

「――そろそろ、目の前のことも――考えてほしいから」


 すると、少し恥ずかしそうにした奈桜に脇腹を刺された。


「――なあ、くすぐったいのですが」

「いいの。で、そろそろ、本たくさんできた?村に、売りに行きたいんだけど?」

「えっと――100くらいはあるんじゃない?アホほど、紙作って、巻物にして、奈桜の書いた奴コピーしていたから」

「桜太君が字がきれいでよかったよ。ホント」

「はははー」


 ちらっと室内を見ると、一部に積まれている奈桜の作品。コピーしたの俺だけど。すごい量だねー。ホント。


「売れたら、どんどん続き書かないとね」

「コピー機作らないか?何とかして、念じたらいけないか?」

「そんなことできるの?」

「――わからん」


 などと奈桜と話をしつつ、のんびりタイムが過ぎていく。


 ◆


 数日後。第1回目の奈桜の本。というか。巻物か。村に持っていってみたら――飛ぶように売れた……いやいや異世界。マジか。


 それから、数年後。奈桜は異世界の作家となっていたのだった。

 みんなに、ハッピーエンドを届ける。と、俺は、隣で、サポート役しつつ。まあ、いろいろしたよ。いろいろ。印刷機作ってみたり。紙も大量に作れるようにしたり。それはそれは俺も支える側頑張ったよ。


 あっ、そうそう、やっとだが、2人の大好きなドーナツも家で現実世界と同じのを作れるようになった。頑張れば何でもできるものだな。俺たちすごい。

 あと、これは、偶然ミッションを受けたらだが。この世界では珍しいという。桜の木を少し前に手に入れた。

 桜の木。こっちにもあったんだと、その時思ったが。どうやら、どこかの村で、桜の木を広げようと活動でもしているらしい。いずれ、見に行ってみたいものだ。


 だって、2人の名前には、偶然桜の文字が入っている。桜の木を見せた時の奈桜の喜び方もすごかったが。そりゃしばらく、奈桜は、桜、見てなかったからかな。

 とまあいろいろやりつつ。ありながら。異世界を今楽しんで生活をしている。もしかしたら、現実世界に居たら。戻っていたら。こんなことは――無かったと思う。奈桜も居ないんだしな。


 ◆


 さてさて、何年も同居人みたいなのに、一度区切りをつけねば。と、思っていたのだが。かなり時間がかかってしまった。

 今日は、奈桜の新しい作品が出来たことで、家の庭にて、ちょっとリッチに食事中だ。そして、あたりは暗くなり。星がきれいに見えている。奈桜は先ほどから「流れ星探す」とかいい空を眺めている。雰囲気は、良い感じなのだが、どのようにこれを渡すか考えている。せっかくできたので、早く渡さないと。と、思っているのだが――多分、怒られることは、ないと思うんだが。タイミングが難しい。


 この世界でも――指輪と、言うのがあるのは知っていたが。材料がね。自分で集めないといけなかったから。プラチナとか、どこにあるんだよ!だったしな。だから、陰で、こそこそしていたから、時間はかかったが材料集めて村の鍛冶屋?かな。もうかなり仲良くなったが。そこに頼んでいたのが、少し前にできた。

 現実世界では、もしかしたらバッドエンドに、なっているかもしれないが。異世界。今の俺は、結構ハッピーエンドに、向かっている気がする。


 ちょっと止まっていた俺の足はやっと、奈桜のところへと動き出した。





(了)

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