第5話 八方ふさがり
ソル3
――今日でこの世界に来て3ソル目である。
ソルって何だろう?
というわけで時間について考えてみた。
ソルとは【
例えば金星は240日以上、木星は約10時間で一回転つまり一日なんだけど――ぶっちゃけ混乱する。
極端な例だったらまだいいけど、火星なんかは24時間39分ちょっとで年単位だとズレが生じてやっぱり混乱する。
だから各惑星の自転で一日を表すときはソルを使うことにするらしい。
もっとも他の惑星に人が住んでるわけじゃないからもっぱらSF小説にしか出てこない概念だけど。
んで、ここからが本題――異世界の暦が分からないなら、私が日付を制定してしまうのが手っ取り早い。
つまり、この世界の刻は私が作るのだ。
とはいえ60進数の使い勝手の良さはよく知っているから、結局のところ一日24時間などなど継承することにした。
地球時間との違いを考察しようかとも思ったが――残念ながら思い立った時にはスマホの電池が切れていた……。
これだからハイテクってやつは原始人には使えないウホウホ。
そう私はいま原始人なのだ。
ハイテクスマホ無し、LEDライトは緊急時のためにチェストに封印。
残りの文明人らしいものは高品質の金属(小銭)ぐらいしかない。
…………
……それって……つまり……なんと脆弱でひ弱な原始人がサバイバル 3ソル目に突入したってことだ!
これってすごくね!
/◆/
――きのうは衝撃的な映像のせいで神殿からあまり外に出なかったが、やったことといえば屋上から森を見渡す遺跡警備ぐらいだ。
結局遺跡に来る気配はなかった。
イネのような雑草や野菜が荒らされていないことから、この遺跡には来ないなにか秘密があるのかもしれない――生物を寄せ付けない何かがあるのか?
とにかくアルタが戻ってくるまでヒッキーしてもしょうがないので、水路の下流側を見てまわることにする。
「――まあようするに畑を耕します」
「何をすればいいんですですか?」
「この土地の石を取り除くのと雑草をむしりとる」
――西側には農耕地帯が広がってたと聞いてはいたが、もうすっかり森に侵食されてるね。
大部分は木で1
「――この
「ウェーイ!」
ゴーレムと共に1
「ってそこのゴーレム――石の投げ合いは禁止!」
「へーい」「ほーい」
/◆/
「険しいサバイバルの予感がするから、刈り取った雑草で紐やロープを作るか」
「あのーこの手じゃ無理オブオブよ!」
「仕方がない――得手不得手があることだしロープ作りは私がやって、耕すのは任せよう」
――決して足が痛くて始めるわけじゃない!
「オヤビン、なんか埋まってたオブ」
「これは……サビた刃物? 農具のようだな! よしもっと見つけてくれ」
「了解オブよ」
――スキルで錬成すれば耕すのに使えそうだ。
ソル8
数ソルぶりにアルタが4体のゴーレムと帰ってきたが報告内容にいい情報はなかった。
「それでは報告します。まずは――」
――拠点の東部に向かいました。
川の上流へと向かっていきました。ここからも見えますが、森を抜けた先は険しい山脈になっております。
進めば進むほど緩やかに上り坂になり、ある程度進むと草木はなくなり岩だらけになりました。
安全にとおれる道を探し、錬金術で橋を錬成し川を越え谷を迂回しながら山間に向かいました。
山の崖や断面には縦穴が無数にあり近づいて調べてみると、細長い2メートルほどの大きさのワームが飛び出してきました。そしてゴーレム一体を捕食し、そのまま地中にもぐってしまいました。
それ以上穴を調べるのは止めました。
その後は別の山脈を進む道を探しましたがどの山にも無数の穴があり、東の山脈を越えるのを諦めました――
「――以上になります」
「よし東は諦めよう――そうだアルタ君、ちょっと農具を錬成してくれないか」
「わかりました。他に必要なものがあったら言ってください」
その後アルタは4体のゴーレムを連れて農地よりさらに奥の西の森の調査に出て行った。
――ゴーレムは時速5㎞ほどで歩く。ちなみに走ると関節が壊れるらしい。
だから1日中歩き続ければ100km以上は移動できる。
あいつらに疲労という概念が無いからだ。
ここからおおよそ東に40㎞で一応森から抜けられるようだ――12時間歩いて抜け出せる。
けど私の脆弱性から察するに1日に15~20kmがいいところだろう。
おおよそ2ソル歩いて何とかたどり着くことになる。
けどいきなりワームとかいう生物に襲われる場所なんてノーサンキュー。
ソル11
――ふと思ったんだが距離は時間と速度で決まる。
そして時間とはソルである……
速度も距離とソルである……
……本当に40kmで合ってるのだろうか?
『君との距離はソルできまるんだ』
――なんだこのなぞポエムは――もう病みまくりでやべーな。
メジャーがあるからあとでメートル換算の距離を聞いておこう。そうしよう。
農地を広げるため木の伐採をしていると森の奥からアルタと2体のゴーレムが帰ってきた。
――今回はたったの3ソルで戻ってきたということは不幸の知らせか……
「それでは報告します――」
――西部は水路の下流側をさらに進むと湖に行き着きました。遺跡から見えた湖です。
水路は湖の下流の川とつながっていました。
そこに朽ちた橋がありましたので、錬成で修復してから川を渡り、奥へと進みました。
1ソルほど進むとそこには5mほどの巨大な4本腕のゴリラのような生物が森を闊歩していました――やはりゴーレムには興味を示しませんでした。
さらに進むと10mを越す巨大な蛇が襲ってきました。逃げる途中で4本腕のゴリラが間に入ってきて両巨獣が闘い始めました。最後はゴリラが蛇を引きちぎって捕食するのを目撃しました。
ゴリラは大小さまざまで、ほかにも人間より大きな昆虫や大猪などを捕まえては捕食していました。
これ以上進むのは危険だと判断して帰ることにしました。
帰り道でゴーレムが2体ほど植物に捕まりバラバラ引き裂かれました。
コアだけを回収してその場を離れました。
この植物にはゴリラも太刀打ちできないのか避けていました。――
「――以上になります」
デジカメの写真からも巨大なゴリラが他の生物を捕食しているのが分かる。食獣植物は擬態してるのか見た目は他の植物と違いが分からない。
「よし、西も諦めよう」
――うーん……異世界ってこえーな!!
アルタはゴーレムを修理して4体連れて南の探索に向かった。
ソル21
――なんと10ソルも置いてきぼりをくらってしまった!
最近心臓がバクバクいってしょうがない。……いよいよひとりサバイバルのときかもしれない。
この10ソルの成果物と言えば紐とロープ数十メートルと1haの農地ぐらいだ。
他には水分の多い大量の雑草と木の枝を乾燥させるために日干にしている。
雑草はロープに木の枝は燃料になる予定だ。
残念ながら見つかった野菜はニンジン、キャベツ、枝豆ぐらいだった――ほんとに残念。
「3種類の種を撒いてからかなり立つけどまだ芽は出ないか……」
その時、南の森からアルタたち一行が帰ってきた。
戻った時にはゴーレムは2体にまで減っていた……。
「……それでは……報告します――」
――南部は獣が比較的少なくできるだけ進んでみました。
途中には肉食獣が大猪を狩っているのを見かけました。
ゴーレムに興味を示しませんでしたので、そのまま先へ進むことができました。
約4ソルほど南に進むと東の山脈が途切れて最後には森の端にでました。
森を抜けたのです!
そこから荒野に変わり赤茶色の大地が続いています。
ある程度進んでみたら地面が動きだし生物の触手のようなのが地中から現れました。
この触手が溶解液を吐き出し、それを浴びたゴーレム2体はみるみる溶けてしまいました。
コアだけを何とか抜き取り早々に立ち去りました。
その後は東の山脈の途切れから渡れないか試しましたが――山脈ワームと地中のナニカが地下で争っていたので少しだけ様子見しました。
少し時間がたって……渡れそうにないと判断しました。
反対方向の西に少し進むと巨大生物の痕跡がありこの先に進むのは止めておきました。
仕方が無いので引き返してきました――
「――以上になります……」
「……南は諦めよう。それにしても約4ソルとなると500㎞以上は南下したのか」
――ゴーレムの不眠不休の行進で4ソルとなると私が一緒だとしたら……うわー。
北には虫の大群。東には山脈ワームの巣。西には肉食ゴリラと食獣植物。南には単独の獣とトレマ味あふれるナニカ。
…………あれ? もしかして……詰んでる?
「残念ながらマスターが安全に通れるルートは無いと思われます」
「何て事だ……一体どうすればいいんだよ……」
その後は摩耗したり壊れたゴーレムの修理してくれた。
驚いたのは探索中に1時間あたり1体ゴーレムを錬成し続けてくれたようだ。
数はすでに200体になるが、いわゆるプログラミング前なので言うことを聞いてくれない状態だ――活用は教育後になるな。
/◆/
――とにかくこの森を脱出して文明的な生活を送りたいのにどうすればいい?
…………。
なんか心的に疲れた。今日は寝よう。対策とかは明日からでいいや。
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レシピ
サビ鉄 + 木 = 農具一式
雑草の紐 = ロープ
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