プロローグ
この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件それから物理現象・化学反応・自然現象とはいっさい関係ありません。
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ガリレオ万歳!
私は幼い時から科学的な問題解決やその理論に魅力を感じていた。
全ての問題を合理的に解決する手法に感動した。
誰だって車や鉄道そして飛行機にワクワクするだろう?
それなのに世の中ってやつは科学をワルモノのように扱う。
その中でも特に大量生産って活動そのものが否定されてるのは悲しくなる。
――大量生産こそ科学と技術の集大成なのにそこを否定して何を訴えようってんだい?
……イメージが悪いんだろうな。
環境破壊とか、環境破壊とか、あとは……環境破壊とか。
ほかにも理由はいろいろあるだろうけど学問として大量生産の知識や理論を公表し周知する団体が存在しないのも問題だと感じたんですよ。
声高な批判に科学者と技術者あるいは世の中の誰も反論しない。
――なにせ大量生産の批判って心に響かないからしょうがない。
環境破壊が問題だって言われても農家が批判されてるとは思わない。
鉱山の公害が問題とされても鉄道員が批判されてるとは思わない。
石油による環境問題で町工場の旋盤工員が批判されることはない。
火力発電所の二酸化炭素排出批判でITエンジニアがわが身のことと思う人はいないだろう。
何が言いたいかっていうと大量生産ってのは世界とつながった一連のシステムで批判しても無駄ってこと。
やるなら全体像を把握した専門家が問題を少しづつ解決するしかないんだよ。
この全体像の把握ってのが厄介でほぼすべての学問を知らなければいけない。
――そうすべてだ!
だから新しい学際的な包括的知識体系が必要だと感じたのさ。
そこで私は一つの学会を立ち上げようと暗躍したわけだ。
――その名は大量生産学!!
うーん、我ながらネーミングセンスが無いね!
いろいろがんばって公的学会に指定されるために奔走したんだけど、なんと科学学術会議の審査要件には――
『目的とする分野における「学術研究団体」として活動していること』
――とある。
つまり専門分野を学術的に追究する団体を認めるのであって、全領域を内包し統合した学際的な団体は対象外ってことだ。
結論、門前払いでした。
――学際的の何が悪い!!
おーけー、問題ないさ。研究会として地道に実績を上げていくよ!
コンコン。
ん? 誰か来たようだ。
――――――
――――
――
おう……まさかの海外長期赴任、理由はよくある海外に生産工場を作るから行って来いと。
海外か……案外いいかもしれない。
この学際的な学問を必要とするのは成熟しすぎた国でなく、もっと発展度合いが低くて、成長の余地が高くて、外的な影響の少ないところだろう。
そう考えると海外ってのはこの国よりは大量生産に対して真摯だろう。
名のあるエンジニアがみんな海外にいくわけだ。
まあ私の場合は引き抜きじゃなくて行ってこいだけど、結局はここに居場所が無いってことだ。
――その順番が私にも回ってきたってだけのことさ。
しかもご丁寧に大量生産学を現地で広めるチャンスだって言いのけるし、そう言えば喜んで行くと思っているな、あの上司は。まあ、行くけどさ。
……ふ~、とりあえず荷物をまとめて出発の準備をしますか。
――――――
――――
――
「新天地に乾杯~! さらば祖国! がんばってサービス業を発展させてくれ!」
――うぃ~ヒックこういう日はクイッと飲むに限るね~。
たしかサービス業がGDPの7割占めてるんだっけ?
この島国じゃ技術者の価値は低いってもんよ!
その時、男の頭の中にイメージが浮かんだ。あきらかに外部からの干渉とわかる鮮烈なイメージの塊が流れ込んでくる。
『စက်မှုလုပ်ငန်း ဖွံ့ဖြိုးတိုးတက် ထာဝရ』
――う、ん?! つまり産業を発展させろと?
『10 жил Хамгийн сайнаараа хичээ』
――10年間でいけるとこまで?
『कौशल मैं तुम्हें दूंगा』
――なんと赴任サービス付きだと!?
うひょー酔いが最高にハイハイのハイボールですな!
ちょうど海外に必要とされてるんだしミー行っちゃうよ!!
どっか行っちゃうYO~~。
「オッケーどこにでも連れていくがいい~、ヒック――よ~し荷物持ったぜ~」
いけね会社に連絡せねば…………。
『צייט האַלטן צוריק מאַך』
――なになに時間の流れが違うから大丈夫と……ならいっか!
やることを要約するとこんな感じかな。
『産業を、発展させて、どこまでも』
うん、わかりやすい。
あれ!? よく考えたら専門書とか、いろいろ持っていきたいものが………
――!!?
次の瞬間、男は森の中にいた。
/◆/
――と、いうわけで絶賛迷子の技術者です。
酔い? そんなのとっくに覚めてるよ!
…………さてどうしよう?
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