パジャマ入れ人形
子供の頃、パジャマ入れ人形を持っていた。
壁に掛けて吊り下げられた女の子の人形はフェルトで出来ていて、背中にチャックがあり、そこを開けてパジャマを仕舞う。
目は丸、鼻は三角、口は笑った形で刺繍してあり、ホッペにはピンクの大きな丸が貼ってあった。
髪は毛糸の三つ編みで確か服は無地の赤い色だったと思う。
普通に可愛い人形だったと(今考えるに)思うのだけど、幼いわたしは怖かった。
実はその頃、物凄い怖がりの癖に、怖い話が好きだったわたしは、たまたま呪いの人形の本を読んでいた。
そしてモロに影響を受けたのだった。
わたしが人形の呪いを回避する為に、一生懸命考えたのは、人形の着ている服にお花の絵を描くというものだった。
綺麗なお花を見たら人形の機嫌も良くなるはず、というある意味、子供らしい作戦は、しかしマジックを片手に描き出してみると考えていた以上に無謀なものだったのがわかってきた。
花びらは歪で茎はひん曲がり、葉っぱは大きさが極端に違うし、何より当たり前だけどマジックは失敗しても消せないのだった。
冷や汗が流れ落ちる。
どうしよう、こんなんじゃ喜んで貰うどころか怒られちゃうよ。
焦って描けば描くほど、それはグチャグチャになっていって、歪な花で赤いドレスがいっぱいになった頃には、わたしは半泣きだった。
それから、パジャマ人形からパジャマを出し入れする時、
「ごめんなさい。お花を描いて喜んでもらいたかったの」
とかいう言い訳を呟く習慣がしばらく続いた。
あのパジャマ人形はどうしたのかなぁ。
自分の幼いながらの小心者ぶりに、改めてパジャマ人形に申し訳ない気持ちになるのでした。
ゴメンナサイ!
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