やっちゃった話(青春トホホ編)

 これは高校卒業記念で数人の友人達と一泊二日グループ旅行をした時の話です。


 その頃のわたしは、でっかい鍵付きの箱入り娘でして、門限も暗くなる迄に帰宅とか連絡は必ず定期的に入れるとか(携帯電話はない時代なので公衆電話から)なかなかに息苦しい生活を送っておりました。


 そんな訳ですから、卒業記念旅行の話が出た時も半分は諦めていました。

 でも、とにかく誠心誠意頼んで、友人達も説得してくれて、な、なんと奇跡的に!許可がおりたのです。


 6人の友人達が一緒だということも大きかったと思います。


 勿論、一緒に行く友人達の氏名、連絡先、それから泊まる宿の住所、名前、電話番号の提出。

 そして、日程表(行きの駅から旅行中の行動予定、帰りの駅への到着時間)も出しました。

 もう楽しみで楽しみで!


 が、実は今もそうなのですが、楽しみな事ややらねばならない予定などが入ると、わたしは前夜、眠れなくなるのです。


 その時もそうでした。

 完全寝不足、だけど高揚した気分もあって前半は大丈夫だったのです。


 そう、あのバスに乗るまでは・・・。


 そのバスは山道を登って行くコースで、舗装されてなかった道はかなりの凸凹で揺れました。

 窓際の席に座っていたわたしは、そのうち、前夜の寝不足がたたり、どうしようもなく眠たくなってきたのです。


 ガラス窓に顔を寄せるようにしてうつらうつらするわたし。


 山道は険しさを増したようで、揺れも大きくなってきます。

 ゴツンゴツン!

 ううう・・・なんだか痛い。

 どうも窓の開閉する為の金具に顔がぶつかったみたい・・・

 慌てて体勢を変えます。

 でも眠たい・・・とてつもない眠気に抗えずに

 またウトウト・・・

 ゴツンゴツン!!

 ううううう・・・またぶつけてしまったみたい

 痛いぞ。眠たいけど痛い。痛いけど眠たい。


 そうこうしているうちに、目的地へ。

 完全に目が覚めたわたし。

 何やら左目の周りがズキンズキンと酷く痛みます。


 そしてバスを降りようと、隣に座っていた友人の方を向いた時

「○✕△✕□✕!!!!!」


 友人が声にならない悲鳴を!

 そして

「その顔、どうしたの?!」

 へ?

 他の友人達も集まって来ました。


 どうもわたしの左目周りは、まるでボクサーのパンチを浴びたかのような青アザが!


 そう、あの山道で窓際に座っていたわたしは居眠りしながら思いっきり窓の金具部分に顔をぶつけていたのです。それも何度も。


「なんで一度で気が付かなかったの?!」

 友達からも散々言われ・・・(そりゃそうだよね)


 とりあえず時間も遅いので、泊まる宿へと行き、宿の人を驚かせ(大汗)目を冷やさせて貰い、家へ電話を入れ(当然ながらこっぴどく怒られました)


 次の日には痛みは収まったので眼帯をつけて、観光もそこそこに帰宅の途に着きました。


 もう友人達にも平謝り。せっかくの卒業記念旅行を散々なものにしまったのが何より申し訳なかった。


 帰ってすぐに行った眼科では、眼球に異常も無くてホッとしたのですが、この青アザはしばらく治らず・・・


 その上、青アザを見た人から広がったのか、

「つきのさんは大人しい顔してるけど、殴り合いの喧嘩して目の周りに青アザできたらしい」

 というウワサが密かに囁かれていたようで。


 真相がわかるまでは、影の番長として恐れられていたとかなんとか・・・


 やっちゃったというか、あまりにもおマヌケで、いまだにスミマセン、スミマセンと謝りたくなる、ほろ苦い青春の想い出です。

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