第43話 彼と彼女の出会いのお話 43
「お見合いというか、私たちは結婚するということでアザレア王たち……君のお父様方も理解しているようだね」
「あ、はい……そうです」
「こちらもそうなんだよ。母様は何を考えてるのかわからないが、私は女なのに君と結婚しろみたいなことを言ってきてね」
「あ、あはは……」
イシュタルは首を傾げているが、フィニアにはなぜウィスタリア王が自分との結婚を彼女に勧めたのかがよくわかっていた。本来なら自分たちは男女でのお付き合いになるからだ。自分が女になることなんて、皆予想外だったんだろう。
「とりあえず十日間は、私は男としてアザレアに滞在するとこにしているんだ。予定通り君と行動を共にするよ。変な混乱を起こしたらまずいだろうからね。フィニア、それでいいだろうか?」
「王女、どうかご協力お願いします~」
イシュタルとメリネヒの言葉を聞き、フィニアは慌てて「そ、それは、はい! 全然それでいいと思います!」と返事する。イシュタルの言うとおり混乱が起きるとまずいと、そうフィニアも思う。
「ありがとう。でも王たちにはやはり私のこと、話しておいたほうがいいよね」
「とうさ……お父様たちにですか? それは……いえ、言わなくても大丈夫な気がします」
フィニアがそう苦笑いで言うと、イシュタルは不思議そうに目を丸くして「何故だい?」と聞く。フィニアが思うに、おそらく両親はすでにイシュタルが女性だということを知っているだろう。
「えっと……あ、お父様たちには自分が後ほど説明します。きっと驚くと思うので、私からまず話をしたほうがいい気がするので」
フィニアは父親たちに今回の見合いの真相を詳しく聞きたかったので、イシュタルにはそう説明しておく事にした。
「それにしても、本当に妙なことになっちゃいましたね……」
フィニアがちょっと疲れたように溜息交じりにそう呟くと、イシュタルも苦笑しながら「本当にね」と頷く。
「でもフィニア、君に会えたことはよかった。だからこのお見合い話も、そう悪いものじゃなかったと思う」
「へ!? あ、私も王子、じゃなくてイシュと会えたのよかったです! ほ、ホントに……こんな綺麗な人に会えて嬉しいっていうか、あの……」
緊張と照れで上手く言葉が出てこないフィニアだが、フィニアなりに精一杯自分の嬉しい気持ちをイシュタルに伝える。ついでに彼女のことが好きで諦める事が出来ない気持ちが爆発し、急にフィニアは興奮したようにイシュタルに詰め寄ってこう彼女に言った。
「そ、そうですよ! お見合いはそのまま続けた方がいいです! もっとその、私のことイシュに知ってもらいたいので!」
「え? あ、そ、そうだね。うん、勿論それはそのとおりだと私も思うよ」
フィニアの突然の必死さに、イシュタルは首をかしげながらも頷く。フィニアはこの十日間で、少しでもイシュタルといい仲になっておこうと決意したのだ。
やはり彼女が好きで気持ちを諦める事の出来ないフィニアは、十日でこの恋に何らかの決着をつけてやると決める。最悪女のままでも大丈夫、恋愛に性別は関係ないよね! とか物凄く前向きなことをフィニアは考え始めていた。
「そうだよ、まだ直接嫌われたわけじゃないんだしチャンスはあるよね?」
「フィニア、なにを一人で言ってるんだい?」
「わわわわ、なんでもないです!」
「?」
フィニアは不思議そうな顔をするイシュタルに、「そ、それじゃもう夜遅いんで部屋にもどります!」と言ってさっさと部屋に戻ろうとする。
「あぁ、そうだね。もう体を休める時間だ。おやすみ、フィニア」
「王女様、おやすみなさいませ~」
「は、はい! お、おやすみなさい二人共!」
美女二人に笑顔で『おやすみ』と言われ、フィニアはまたわかりやすいくらい顔を真っ赤にしながら部屋を後にする。そして色々時間が無いと焦った彼女は、十日間でどうイシュタルに自分をアピールするかを、早速自室で考える事にした。
【第一章・了】
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