第16話 彼と彼女の出会いのお話 16
「んー……呼ぶ気は満々だったけど、呼べればラッキーくらいな期待ではあったかも」
フィニアとロットーがそんな感じで会話をしていると、完全放置プレイされそうになった魔人は咳払いをして自分たちにもう一回注目してもらおうとする。その人間臭い仕草にロットーはちょっと笑い、フィニアは「あ、ごめん」と魔人にほったらかしていた事を素直に謝った。
「それでマスター・フィニア、我らを呼んだ理由を話してもらおうか」
赤の魔人がフィニアにそう声をかける。フィニアは張り切った笑顔で「うん!」と頷いた。が、その直後彼は「あ、その前に確認したい事があるんだけど」と言った。
「なんだ?」
「うん。魔人召喚を調べてて知ったんだけど、魔人は一人一つの願いを叶えたらそれで終わり、一度魔人を呼んだ者はもう二度と魔人を呼ぶことが出来ない決まりってあったんだけどホントかな」
「本当だ。一人の魔人が起こせる奇跡は一つ。そしてたとえ我ら以外の魔人を呼ぼうとしても、お前はもう二度と魔人を呼ぶことは出来ない。魔人が特定の術者に何度も接触するのはよくないと、我ら魔人の間で取り決めた事だ」
魔人の答えにフィニアは頭を掻いて「あー、やっぱりそうか」と言う。しかし魔人二人は不思議そうな様子で、困ったような反応をするフィニアにこう言った。
「? マスターフィニア、お前はそれをわかっていたからこそ我らを呼んだのではないのか?」
魔人の言う事がよくわからなんくて、そばで話しを聞いていたロットーが眉を顰める。一方でフィニアには意味が伝わったらしく、彼はちょっと困ったように笑って「まぁね」と頷いた。
「もしもそうだったらちょっと困るかなーってふうには思ってたからさ。俺のお願いしたいことはどう頑張っても一回だけのお願いじゃ足りないから、二人で一つの魔人である君たちを呼んだんだよね」
「そうか。だがマスターフィニア、そのかわり我らは他の魔人ほど大掛かりな奇跡を起こすことは出来ないが」
「あぁ、うんそれはいいよ。そんな大それたお願いはしないからさ」
完全外野状態のロットーには二人の会話の意味がよくわからなかったので、とりあえず彼は今までのフィニアと魔人の話を整理して考えてみる事にする。
まず魔人を呼べるのは一生で一人一回だけ。それ以上はどう頑張っても呼べないらしい。
魔人はおそらく魔法的な力で、召喚者の願いを一つ叶えてくれる。それで普通だと魔人は消える。
しかしフィニアが今回呼んだ魔人は、二人で一つの魔人らしくお願いが複数回可能。きっと普通に考えれば、一人一つで二回お願いが出来るのだろう。そのかわり他の魔人のように、大きな願いは叶えることが出来ない。
そしてフィニアの話をきくと、彼はどうやら意図的に今回複数回願いを叶えられる魔人を召喚した。彼は複数回魔人にお願いしたいことがある。
「……王女、この前聞きそびれて今更ですけど、一体何の為に魔人を呼んだんです?」
ロットーの疑問を聞いて、フィニアはニヤリと笑い振り返る。彼の怪しい笑みに、ロットーはちょっとぎょっとした。
「あ、王女もしかしてなんか悪い事企んでる? まさか世界征服したいとか考えてるってオチ?」
恐る恐るロットーが問うと、フィニアは先程の怪しい笑みと打って変わってカラッとした笑顔になって「そんな物騒なこと考えてないよ」と答える。ロットーは「あ、そうスか」と言い、なんだかとても安堵した。
「ではマスターフィニア、お前の願いは?」
今度は魔人はフィニアに問いかける。フィニアはまた魔人に向きなおり、そして彼は誰もが予想していなかったぶっ飛んだことを魔人にお願いした。
「俺を女にしてくれ!」
「了解した」
ロットーに驚く間も与えず、赤の魔人はフィニアのお願いを問答無用に承諾する。ロットーが『今王女なんて言った?』と考えていると、赤の魔人がパチンッと指を鳴らし、フィニアの体は一瞬にして赤い光に包まれた。
「王女!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます