第15話 彼と彼女の出会いのお話 15

「アザレアの血の者か。呼ばれたのは久々だ」


 二人がしばらく目を瞑っていると、強烈な光は消えて声が聞こえた。それは青年のような、老人のような不思議な男性の声。フィニアとロットーが恐る恐る目をあけると、まだ少しチカチカする視界の中に、二人は見たことの無いものを見つけた。


「あ……」


「うわ……」


 フィニアとロットーがそれぞれにマヌケな顔でマヌケな声を出す。二人の視線の先には、フィニアを見下ろすような形で見る小柄な人物が、魔法陣の中央に浮かんで存在していたのだ。

 魔法陣から数十センチほど浮いて立つその人物は二人。耳だけ獣のようなものだったが基本人型で、その人物は妙に胴手足が短い。子供ではないと雰囲気でわかるのだが、大きさは子供のようだった。白い髪の毛に片方が青い目、もう片方が紅い目、服の色もそれぞれデザインは同じなのだが目の色同様に赤と青で違う。色が赤と 青で違う以外はそっくり同じ容姿で、若いようにも年老いたようにも見える不思議な印象を持つ人物だった。


 ――魔術を監視する番人・ゴエティア魔人”奇跡を呼ぶ者セーレ”


「フィニアと言ったな。お前はアザレアの血を引く男児か。なるほど、だからあのような中途半端な呪文でも、我らは引き寄せられたというわけか」


 魔人はフィニアを見て、何か納得したように頷いた。

 魔人に話しかけられたフィニアは、まだポカンとした顔で呆けている。ロットーもフィニアがなんか凄そうなものを本当に召喚した事に驚いて、やはりフィニアと同じように呆けて魔人を見つめていた。


「なんだ? 我らを呼んだのはお前だろう? 何を驚いているのだ?」


 魔人が同じ動作で首を傾げる。フィニアはまだちょっと呆けた顔のまま、「あ、うん……」と頷いた。


「いや、まさか本当に召喚できるなんて、と思って。っていうか、本当に魔人? あ、雰囲気で凄そうな人ってのはわかるんだけどさ」


 フィニア自身も心のどこかで実は召喚できないんじゃ……? と不安だったらしい。魔人はやはり同じタイミングで互いに顔を見合わせ、そして全く同じ動作でまたフィニアを見た。


「マスターフィニア、我は確かに魔人だ。お前の呼ぶ声に引き寄せられ、我らはここに来た」


「魔術使うものを監視し世界を渡るゴエティアの魔人セーレ、マスターの願い叶えようぞ」


 二人の魔人の言葉に、フィニアは段々自分が魔人を召喚したんだと実感が持てるようになったらしい。彼の表情は段々興奮したように輝きだし、「魔人にマスターって呼ばれた……!」と感動したように呟いた。そして彼は勢いよくロットーの方を振り返り、彼に鼻息荒く「ロットー、俺本当にやったよ!」と子供のように喜びを 伝えた。


「魔人! 凄いだろ!」


「……あー、はい。まさかホントに呼ぶとは……っていうか、結構あっさり呼ぶからまだちょっと俺実感無いって言いますか……」


 ロットーはぽりぽりと頭を掻きながら、そう正直に自分の感想を述べる。フィニアも「俺も正直驚いた!」とか言っていた。


「王女、あれだけ自信満々に『召喚してみせる』とか言ってたのに、実はそんなに自信無かったんですか?」

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