第18話 彼と彼女の出会いのお話 18

「っていうか王女、そりゃ俺も王女のことバカバカ言いたくもなりますよ! だって王女、女になったらそれこそ本当にお見合い成功して王子様と結婚なんてことになっちゃうかもしれないんですよ?」


 ロットーのその言葉に、フィニアは大真面目に「それの何がいけないんだ?」と聞く。ロットーは「あれ、王女まさか王子様と結婚したいんですか?」と逆に質問した。


「ん……えーっと、結婚は好きな人としたいかな、やっぱり」


「なに顔赤らめながら答えてるんですか、気持ち悪い」


「き、気持ち悪いとか言うなよ。俺真面目に答えてるのに」


「王女、王女に今好きな人がいるかどうかは俺も知りませんけど、女になって王子と見合いしたら王子と結婚する確率高くなりますよ? 政略結婚なんて基本的に強引なものなんですから。それ、いいんですか?」


「え……」


 ロットーの言葉にフィニアは段々混乱してくる。

 突然湧いて出た王子様と見合いするという話だが、自分が男じゃ見合いなんて出来ない。だから女になった。まぁ女になった理由は他にもあるけど、とにかく女になったから、これで問題なく王子とお見合いできるはず。でもロットーは自分に、王子と結婚したいのかと聞いてくる。そりゃ自分は元々男だし、出来れば恋に落ちた 女の人と大恋愛の末結婚したい。そんなのきっと無理だろうけど、でもこっそり読んでる恋愛小説に憧れてそんな夢を抱いていたりする。……あれ?


「……ロットー、俺ちょっとすごい混乱してきた。あのさ、頭の中整理したいから話きいてくれる?」


 ロットーは「どうぞ」と頷く。魔人とロットーが静かに見守る中、フィニアは混乱しながら自分の考えを語った。


「あのね、俺妹にすっごい嫌われてるじゃん? それはもう邪険に。妹の俺を見る目はあれ虫けら見る目と同じだよ。でもさ、俺は妹好きなわけ。普通にお兄ちゃんとしてさ、妹が可愛いと思うんだ。これでも大昔はコハク、俺のとこ『おにいちゃま』とか舌足らずに呼んで懐いてくれてたし。でもね」


「王女、その話長くなりそうですか?」


「長くなるに決まってるだろ! っていうか話は最後まで聞いてよ。途中で遮るなって。で、そんな妹に好かれたい気持ちもあって俺女になったの。だって妹が俺を嫌う理由って、俺が男なのに『王女』だからじゃないか。なんか妹の話聞いてると、それが原因みたいなんだよね。妹の中で俺って『男の癖にドレス着る気持ち悪い兄 』って認識されているみたいでさ。だから俺、女になったら妹も俺のこと好きになってるれるかなって思ったんだ」


「どうしてですか?」


「だって女だったら間違いなく王女だし、ドレス着ても何も変じゃないだろ? だから俺魔人を呼んで自分を女にしてもらおうって、ずっとそう決めてたんだ。このまま男でいてもこれといっていい事俺には無いし、昔みたいに妹に好かれたかったから。それで今回魔人召喚の方法を見つけ、そのタイミングでお見合いの話が来たんだよね」


「あー、そうですね。それで?」


「うん。それでお見合いのことなんだけど、男とお見合いって聞いてすごい驚いたけど、なんか断れない雰囲気だったし、とりあえず失敗させちゃいけないと思ったんだ。ほら、この国のためにも大きなウィスタリアと仲良くなれるチャンスだから。それくらい俺にもわかるよ、これでも一応王女としてこの国のこといろいろ考えて るしさ。で、タイミングよく魔人召喚の方法がわかったから、この機会に魔人を呼んで女にしてもらおうと思ったわけ。で、このとおり女になれたんだけど……」


 フィニアはここで一旦言葉を切り、そして難しい顔で沈黙する。ロットーが「どうしたんですか?」と声をかけると、フィニアは「ここからよくわからなくて」と力なく呟いた。

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