第22話 彼と彼女の出会いのお話 22
「何が何とかなるの?」
両親の怪しい会話をちょっと聞いていたフィニアが二人に問うと、二人は揃って怪しい笑顔で「なんでもない」と首を横に振った。
「それよりフィニア、お見合い用に今からドレスを作りましょう。お母さんも付き合いますから、可愛いドレス用意しましょうね~」
「え、作るって俺がドレス作るの?」
フィニアのアホ発言を無視し、王妃はフィニアをどこかに引っ張っていく。慌ててロットーが部屋を出て行った二人の後を追い、部屋には王たち四人が残された。
「……王、フィニア様はまたとんでもないことをしでかしましたな」
オリヴァードのその言葉に、王は「とんでもない事とはなんだ?」と首を傾げる。わりと常識的で冷静なこの老人は、すっかり舞い上がってる王を見て呆れた顔で溜息を吐いた。
「王、フィニア様が女性になられたのですぞ。あなた方に何の相談も無しに」
「それの何が問題だ? 良いではないか、可愛いし」
「王……まぁ、いいでしょう。お二人がいいと仰られるのなら」
むしろ王は何故オリヴァードがそんな溜息を吐くのかがわからない。
やがて王は娘版フィニアにデレデレだった顔を、突然真面目なものに変えて語り始めた。
「オリヴァード、あの子は悩んでいたのだ。アザレアの血を引く男児は忌むべき存在となる。だがあの子はコハク同様、俺たち夫婦にとっては可愛い子供だ。しかしそれは認められない……あの子が男だからな」
「王……」
「俺は正直悔しい。あの子がそこまで悩んでいたと気づけなかったことがな。男を捨てることを選ぶほどに、あの子にとってはアザレアの血を引いて男として生まれたことが辛かったのだろう。不自由な生きかたを強制されるせめてもの代わりに、今までもあの子にはこの城の中では出来うる限りの自由を与えてやっていた。しかし それだけではあの子を救うことは出来なかったのだ。悩ませ、苦しませただろう。申し訳ないと思う」
王はそう少し悲しげな口調で語る。オリヴァードは直ぐには言葉を返せず、やがて一言「そうですな……悩んでいたのでしょう」と頷いた。
「だから勝手に女になったと言う事を俺は責めん。カレラも同じ気持ちだろう。俺たちはフィニアの意思を尊重することにする」
「王……」
王の言葉にオリヴァードが感動している側で、今まで成り行きを見守っていたコハクがぼそっとこう呟く。
「でもお見合い無理矢理させようとしてましたわ、お父様とお母様は」
「こ、コハク様!」
冷静で的確だが空気読んでないコハクのツッコミに、マリサナが慌ててフォローしようとする。しかし王は全く動じず、「まぁ、それはそれだ」とかのたまった。
「コハクは可愛いとは思わないか?」
王に聞かれ、コハクは不機嫌そうに目を逸らして答える。
「全然そうは思いませんわ。気持ち悪い兄がますます気持ち悪くなっただけじゃないですか」
悲しいことに、フィニアが女になった一番の目的であるコハクには、現在のフィニアも昔同様に大不評らしい。
「わたしはとても可愛いと思いますよ、今のフィニア様。コハク様にそっくりで」
マリサナがのほほんとした笑顔でそう言うと、コハクは怖い顔で「マリサナなんて大嫌いです!」と言いマリサナを果てしなく困らせた。
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