第53話 前途多難過ぎる恋 10
とりあえず店を出たフィニアは、外で待っているらしいロットーたちを捜す。が、パッと見彼らが見当たらない。店の直ぐ外の出入り口で待ってると最初に聞いた気がしたが、その周辺にロットーらしき人物はいなかった。
「あれ……どこいったんだろう、ロットー」
ロットーがいないことがちょっと不安になり、フィニアはフラフラと彼を捜して歩く。そしてそのままお馬鹿な彼女は、人波に流されて一人で街中へと向かった。
その頃ロットーはあの甘味処の店内にいた。騎士の一人のレジィと共に、用を足したくてトイレを借りてたのだ。フィニアと見事なすれ違いである。
「それにしても王女たちまだケーキ食ってんすかねー」
この待ち時間ですっかり意気投合したレジィに、トイレから出たロットーはそう話しかける。レジィは「女性は甘いもの好きだし、きっとまだ食べてますよー」と笑顔で答えた。
「だよなー。はぁ……毎回王女の行くとこに付き合わされるのも疲れるぜ。もうさっさと帰って寝たい……」
「あはは、王女様の護衛って大変そうな仕事ですよね」
二人はそんな話しをしながら、店内を歩く。そして外に戻る前に、王女たちの様子を見ていこうということになった。そして皆はフィニアが大変なことになってるということを知る。
「あれ、フィニア王女は?」
イシュタルたちが座る席にやって来たロットーは、そこにフィニアがいないことに気づいてそう声をかける。するとマリサナが「フィニア様は外の空気を吸いに行かれたけれども」と答えた。
「本当か?」
「えぇ。外にはあなたがいるから私たちはここにいていいと、そう言って先ほどフィニア様は出て行かれたのだけれども……」
マリサナの説明を聞いて、ロットーとレジィは顔を見合わせて焦る。自分たちがトイレに行ってる間にフィニアは外へ向かったのだ。外には一応もう一人の騎士が待っていたが、フィニアのことだし彼の顔なんてろくに覚えちゃいないだろう。きっと彼女は自分を捜していると、そう思ったロットーは「まずい!」と言いながら急 いで店の外へ向かった。
ロットーの焦り具合を見て、イシュタルたちも事態の深刻さに気づき始める。
「ロットー、どうしたのでしょう?」
コハクがそう呟くと、レジィが「実は……」と、自分たちがフィニアが店を出たのと丁度同じタイミングで自分たちがトイレに行ってたことを説明する。それを聞き、マリサナとイシュタルは慌てて立ち上がった。
「もしかしてフィニアは行方不明?!」
「フィニア様、こちらにも戻ってきてませんし……まさか」
コハクもさすがにちょっと心配そうな顔になる。一人メリネヒだけはケーキ食べながら「フィニア王女、失踪ですか?」とまだよく事態が把握できていなさそうな顔をしていた。
そして直ぐにロットーが、もう一人の騎士の男性と共にイシュタルたちの元へ戻ってくる。その表情は険しい。
「マジでやばいことになりました。やっぱりフィニア王女行方不明です。彼も王女見てないって」
「すみません……」
騎士の男性が申し訳なさそうに頭を下げるが、ロットーは「いや、王女がいなくなったのはあんたのせいじゃないから」と彼をフォローする。しかし護衛としてフィニアを見失った彼は、酷く焦っていた。
「王女はコハクちゃんほどしっかりしてないし街のこともよく知らないんだ。おそらく俺を捜して一人でどっかにふらっと行っちゃったんだろけど、絶対迷子になってるか何かトラブル起こしてると思う。早く見つけないと」
ロットーはそう言うと、イシュタルたちに「そういうわけで俺はフィニア王女捜しに行きます」と頭を下げる。しかしイシュタルもフィニアが行方不明になってしまったことが心配だ。彼女は一人で捜しに行こうとする彼にこう言った。
「じゃあ私も捜すよ。彼女を一人にしてしまったことは私にも責任がある」
イシュタルに続いてマリサナも「私も行きます」と言う。しかしロットーは「君はコハク王女の側にいないと」と指摘した。
「それはそうだけど、でも……!」
「いいのです、ロットー。私もマリサナとお姉様を捜しに行きますから。そうすれば何も問題無いですよね」
コハクはそう言い、椅子から立ち上がる。正直ロットーもマリサナもコハクが『あんな馬鹿のことほっとけばいい』くらいのことを言うと思っていたので、彼女のこの反応には二人ともひどく驚いた。
「コハク様、いいのですか?」
思わずマリサナがそんなことを聞いてしまう。コハクは「妙なトラブル起こされると私も困るんです。だから捜すだけです」と、ちょっと怒ったように返事した。
「あ、じゃあ僕らも捜します! 王女様いなくなったなんて一大事ですし!」
レジィともう一人の騎士も捜索に加わる事になり、メリネヒもすっかりケーキを平らげた後に口にクリームつけたまま「私も捜します~」と言う。
「じゃあ皆で捜しましょうか……なんかすいません、ご迷惑おかけして。俺が目を離したのがいけなかったですね」
ロットーは普段からフィニアの保護者みたいな立場なのでついそんなふうに謝ると、イシュタルが「誰のせいでもないよ」と彼に言葉を返す。
「それより早くフィニアを捜そう」
「そうですね」
そういうわけですぐにお店に飲食代を支払い、イシュタルたちは全員でフィニアを捜しに向かう事にした。
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