第40話 彼と彼女の出会いのお話 40
「そっか……やっぱりじゃあこれは……」
間違いない、自分は恋してるんだ。彼女に。
「王女、あの……」
フィニアが自分の恋に確信を持ってる頃、自分が女生と知ったフィニアが困ってると思ったイシュタルは、申し訳なさそうな顔でなるべくフィニアを傷つけないように話を続ける。
「王女、私は女性です。しかし王子だ。こうなったのには深い事情があります。それはまた後ほどお話しますが……とりあえず今は、私はあなたにこれだけは伝えたい」
「え? あ、あの……」
イシュタルが女性と知りテンション上がってきたフィニアに、イシュタルは思いつめたような深刻な表情でこう告げた。
「私は王女のことが好きです」
「え! ほんと!?」
「え?」
「あ、すいません……ど、どうぞお話を続けてください……」
思わず喜んでしまったフィニアは、口を閉じて話の続きを大人しく聞く。
「ですから王女を騙してしまった事がとても辛い……王女は私との結婚を考えていてくれていたのでしょう。しかし私はこのとおり女性だ。結婚は出来ない……しかし私は出来れば王女と友達にはなりたい。勝手な言い分でしょうが、でも私は今日こうして王女と会って、王女のことをとても気に入ってしまいました。王女は不思議な魅力に溢れた方で、とても面白い方です。王女のような女性に、私は初めて出会った」
よくわからないが自分が褒められているので、フィニアはまた照れた様子を見せる。イシュタルは意外にもフィニアが受け入れた様子を見せてることを不思議に思いながらも、自分の今の素直な気持ちを彼女に全て伝えようとした。
「王女、騙してしまった私を許してほしい。私はあなたに嫌われるのが辛い……」
イシュタルのその一言に、フィニアは「き、嫌うなんてとんでもない!」と返す。そして思わず彼女は「むしろ好きです!」と、ごく自然な勢いでイシュタルに告白した。生まれてはじめての告白に、フィニアの心臓はまたバクバク大きな音で脈打ち始める。が、当然といえば当然なのだが、イシュタルはフィニアの告白を告白とは受け取らずに、ただ嬉しそうに微笑んでこう返した。
「よかった。王女に嫌われたらどうしようと、それがすごく心配だったから。王女のような元気で面白い同性のお友達が、私は欲しかったんです。好きと言ってもらえて嬉しい」
「へ? おともだち?」
イシュタルの『お友達』発言に、フィニアは眉を顰める。しかも今彼女ははっきりと『同性』とまで言った。まぁ、確かに今自分は女だが。
「私、この通りだから私が女だということを知る人は家族以外にはメリネヒしかいなくてね。なかなか友人も作りづらくて……だから王女が友達になってくれるのは本当に嬉しいんだ。私は王女みたいな自由奔放な女性にも憧れるし、是非色々お話したりしたい」
「あ、はい……そ、ですか」
ここまでイシュタルの話を聞いて、いくらお馬鹿なフィニアでも悲しい事実に気づいてしまう。イシュタルはあくまで女の子のフィニアを気に入っていて、さらにそんなフィニアとお友達として付き合いたいと言っているのだ。速攻で失恋したフィニアは、今すぐ自棄酒煽って泣きたい気分になった。お酒飲めないけど。
(そうだよな……王子にとって俺はただの女の子のフィニア王女だもんな……)
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