概要
ハルマゲドンにより「世」は滅び、善い人間だけが救われて、地上の楽園で永遠の命を約束された。
それまで発展していた文明はそのままに、愛に生きる人々は産み栄え、やがて子らの中から、ふたたび反抗的な者が出てくる。
千年王国の区切りに反逆者たちはふたたび滅ぼされ、完全に正しい者だけの世界が来ると預言されていた。
千年王国、978年を数えたある日。
ひとりの天使が息絶えた。
天使の死を目撃したのは、ハルマゲドン後の楽園しか知らない、無垢な女カヤ。
天使からも悪魔からも追われる身となったカヤは、バスジャックに乗り合わせてしまう。
一方エデンの外では、悪魔に創られたカエラが日記をつける。
交錯する二人の行方は。
聖書に記述された「千年王国」を勝手に解釈・妄想した、愛の物語。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!秀逸のミステリー大作
一気読みしてしまいました。なにもかも、非常に鮮やかな手腕に脱帽です。各章のサブタイトルが綺麗な三角形を描いているのも並のお方ではありません。普通のサブタイトルを考えるだけで力尽きそうになる自分と比べてはいけませんが、なんという余裕なのでしょう。
個人的にはフィクションや異世界ジャンルに興味が薄いのですが、巧みなストーリー運びと少しずつ明らかにされる数々の謎の部分に惹きつけられ、気付けば読み続けてしまいました。魅力的な登場人物達をマンガ化、アニメ化で見てみたい気もします。
作者様の明確な世界観と、各エピソードの表現力やメッセージに唸らされます。良い刺激、良い時間をありがとうございました。 - ★★★ Excellent!!!しっかりと煮詰められた物語を味わう幸せ
聖書を題材にとった、ハルマゲドンの後の世界を描く群像劇。
カヤという敬虔な信者の女性と、カエラという美しさの塊でありながら娼婦のような女性。
この二人の一人称で交互に語られながら物語は進んでいきます。
はじめは登場人物と言葉の定義を理解するのに少し難しさがあるかもしれません。でもこの序盤を丁寧に読み進めていくと、中盤から物語が大きく動き始める頃にはもうやめられなくなっています。しっかりと煮詰められた物語を味わう楽しさを感じて、最後まで見届けたくなるのです。
天使、悪魔、厭世家、迷子……。登場人物たちの複雑に絡まりあった関係が紐解かれていく様子は読書の快感です。「愛」という正体の見えないもの…続きを読む - ★★★ Excellent!!!天使の死の謎から始まる、「愛」とは何かを問う物語。
ハルマゲドンのあと、不老の人々と天使が共存する千年王国。
天使ノームが死ぬ現場を目撃したカヤは、
天使からも悪魔からも追われる立場になる。
悪魔に作られた、魂がなく心も半分しかないカエラ。
日記でセックス連呼してますが、何故かめちゃくちゃ可愛い。
愛には四種類ある。
エロスとアガペーは聞き覚えありますが、他は知りませんでした。
ハルマゲドンのあとの世界ってどうなるんだっけ?
と全く知らなかったので、興味深く読みました。
正直、第一章は世界観と登場人物を把握するのに精一杯で、
二話ずつ(カヤとカエラ)ちびちび読んでいたのですが。
第二章くらいから、だんだんやめられなくなってくるのですよ。
…続きを読む - ★★★ Excellent!!!読み終えたら、神の愛が飽和する。
やられました。
これは、クリスチャンでなければ書けない気がします。
神学の知識とか、歴史の知識とか、そういう次元の話ではありません。
救われるとは何か?
信じるとは何か?
神って何か?
神さまを愛するとはどういうことか?
神さま「が」愛するとはどういうことか?
こういう疑問を人生の中で常に持ち続けてきて、心の中で醸造した人でないと書けない作品です。
もちろん、これは小説です。そんじょそこらの聖書なんかではありません。それも、特一級の。
舞台は、新約聖書に描かれたとおりのハルマゲドンで文明が崩壊し、神の国と悪魔の解放が実現した近未来。善人と天使しかいない神の国で、有り得ない犯罪が起こっ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!神聖なる悪魔の書
かわいい悪魔と厳しい天使たちが紡ぐ、とっても残酷なお話です。
……すみません、大嘘です。めちゃめちゃ深い話です。
登場するキャラクターの多くがセックスします。
これは困ります。性別を超えてセックスしまくるのです。
人間じゃなくても、身体がなくてもするんです。
テーマは「愛」。とても困ります。マジで神様ってなんなんですかね。
唯一神の世界って、突き詰めて考えたらこんな感じなの?
確かに「道徳」ってのは人間が産まれる前からあったわけじゃないけどさ。
天使も悪魔も完璧な存在のはずなのにみんな悩みまくって、暴れて、セックスする。
中にはセックスしない存在もいます。でもたいていします。
そし…続きを読む