千年王国978年目、崩壊の前兆と愛について

作者 みりあむ

しっかりと煮詰められた物語を味わう幸せ

  • ★★★ Excellent!!!

聖書を題材にとった、ハルマゲドンの後の世界を描く群像劇。
カヤという敬虔な信者の女性と、カエラという美しさの塊でありながら娼婦のような女性。
この二人の一人称で交互に語られながら物語は進んでいきます。
はじめは登場人物と言葉の定義を理解するのに少し難しさがあるかもしれません。でもこの序盤を丁寧に読み進めていくと、中盤から物語が大きく動き始める頃にはもうやめられなくなっています。しっかりと煮詰められた物語を味わう楽しさを感じて、最後まで見届けたくなるのです。

天使、悪魔、厭世家、迷子……。登場人物たちの複雑に絡まりあった関係が紐解かれていく様子は読書の快感です。「愛」という正体の見えないもの、「神」という絶対的な存在に対して、迷い、悩み、挑み、その先に彼らが見たものは……?

ひとりひとりのキャラクターが濃く、深い。その思考のぶつかり合いがすごい。
なかでも個人的に好きなのはカエラです。この人形のような女性が知識を身につけ、自分で考え始めるとき、何とも言えない悲しさと、自分の心を持つという幸福をいっぺんに感じました。

この作品を読むと、自分の感性を信じて書いたものには必ず誰かを惹きつける力があるのだと思います。
ゆっくり丁寧に咀嚼して読みたいし、その価値がある素晴らしい作品です。
幸せな読書時間をありがとうございました。 

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