一気読みしてしまいました。なにもかも、非常に鮮やかな手腕に脱帽です。各章のサブタイトルが綺麗な三角形を描いているのも並のお方ではありません。普通のサブタイトルを考えるだけで力尽きそうになる自分と比べてはいけませんが、なんという余裕なのでしょう。
個人的にはフィクションや異世界ジャンルに興味が薄いのですが、巧みなストーリー運びと少しずつ明らかにされる数々の謎の部分に惹きつけられ、気付けば読み続けてしまいました。魅力的な登場人物達をマンガ化、アニメ化で見てみたい気もします。
作者様の明確な世界観と、各エピソードの表現力やメッセージに唸らされます。良い刺激、良い時間をありがとうございました。
聖書を題材にとった、ハルマゲドンの後の世界を描く群像劇。
カヤという敬虔な信者の女性と、カエラという美しさの塊でありながら娼婦のような女性。
この二人の一人称で交互に語られながら物語は進んでいきます。
はじめは登場人物と言葉の定義を理解するのに少し難しさがあるかもしれません。でもこの序盤を丁寧に読み進めていくと、中盤から物語が大きく動き始める頃にはもうやめられなくなっています。しっかりと煮詰められた物語を味わう楽しさを感じて、最後まで見届けたくなるのです。
天使、悪魔、厭世家、迷子……。登場人物たちの複雑に絡まりあった関係が紐解かれていく様子は読書の快感です。「愛」という正体の見えないもの、「神」という絶対的な存在に対して、迷い、悩み、挑み、その先に彼らが見たものは……?
ひとりひとりのキャラクターが濃く、深い。その思考のぶつかり合いがすごい。
なかでも個人的に好きなのはカエラです。この人形のような女性が知識を身につけ、自分で考え始めるとき、何とも言えない悲しさと、自分の心を持つという幸福をいっぺんに感じました。
この作品を読むと、自分の感性を信じて書いたものには必ず誰かを惹きつける力があるのだと思います。
ゆっくり丁寧に咀嚼して読みたいし、その価値がある素晴らしい作品です。
幸せな読書時間をありがとうございました。
ハルマゲドンのあと、不老の人々と天使が共存する千年王国。
天使ノームが死ぬ現場を目撃したカヤは、
天使からも悪魔からも追われる立場になる。
悪魔に作られた、魂がなく心も半分しかないカエラ。
日記でセックス連呼してますが、何故かめちゃくちゃ可愛い。
愛には四種類ある。
エロスとアガペーは聞き覚えありますが、他は知りませんでした。
ハルマゲドンのあとの世界ってどうなるんだっけ?
と全く知らなかったので、興味深く読みました。
正直、第一章は世界観と登場人物を把握するのに精一杯で、
二話ずつ(カヤとカエラ)ちびちび読んでいたのですが。
第二章くらいから、だんだんやめられなくなってくるのですよ。
最後まで読むと、ほとんどの登場人物たちが、
登場時の第一印象とは違って見えます。
悪魔パイモンが可愛いってどういうことだ。
あ、カエラは最初から最後まで可愛い。
面白かったです。
やられました。
これは、クリスチャンでなければ書けない気がします。
神学の知識とか、歴史の知識とか、そういう次元の話ではありません。
救われるとは何か?
信じるとは何か?
神って何か?
神さまを愛するとはどういうことか?
神さま「が」愛するとはどういうことか?
こういう疑問を人生の中で常に持ち続けてきて、心の中で醸造した人でないと書けない作品です。
もちろん、これは小説です。そんじょそこらの聖書なんかではありません。それも、特一級の。
舞台は、新約聖書に描かれたとおりのハルマゲドンで文明が崩壊し、神の国と悪魔の解放が実現した近未来。善人と天使しかいない神の国で、有り得ない犯罪が起こった。
天使が、死んだ。
その場に居合わせた主人公は、直後に誘拐される。しかも、神に認められた善人であるはずの人間、天使の付き人、厭世家に。
有り得ない状況に有り得ない人々。
彼らと行動を共にするうちに次第に明らかにされていく、天使と悪魔と人間の複雑で哀愁に満ちた関係。真実を追い求める悪魔、創られた命。
そして、この世界の真実。
神さまは一体、何を考えているのか?
読み終わってから一週間が経ってしまったのですが(すぐに書かなくてごめんなさい…!)、これはきちんとレビューせねばならない作品だと思い、加筆させて頂きました。
アポカリプス作品としてこれまで読んだ全ての作品の中でも私の中ではトップクラスの大作です。順位をつけるとしたら風の谷のナウシカと同列一位かも。
かわいい悪魔と厳しい天使たちが紡ぐ、とっても残酷なお話です。
……すみません、大嘘です。めちゃめちゃ深い話です。
登場するキャラクターの多くがセックスします。
これは困ります。性別を超えてセックスしまくるのです。
人間じゃなくても、身体がなくてもするんです。
テーマは「愛」。とても困ります。マジで神様ってなんなんですかね。
唯一神の世界って、突き詰めて考えたらこんな感じなの?
確かに「道徳」ってのは人間が産まれる前からあったわけじゃないけどさ。
天使も悪魔も完璧な存在のはずなのにみんな悩みまくって、暴れて、セックスする。
中にはセックスしない存在もいます。でもたいていします。
そして、この書には全てがある。
幸せとは何か? 体とは心とは、異性とは自分とは何か?
美とは智とは魂とはなんなのか? なぜ私は嫉妬し、何をもって誘惑にかられ、どんな存在に無償の愛を注ぐのか?
自由とは? 運命とは? 完全とは?
最後の章までたどり着いたとき、あなたは世界を形成する理を俯瞰してみることができるようになっていることでしょう。
そして最終話。この『神聖なる悪魔の書(かわいい)』を手にして良かったと思うはずです。きっと。