第3話 One Love -Ayaka side-

 レッドガーデンでを堪能した私たちは、街歩きの途中で見つけたの前に足を運んだ。


Love Laneと呼ばれる細道とChulia Streetが合流する辺りには夜になると様々な屋台が立ち並ぶ。その一画にボブ・マーリーの肖像とラスタカラーで彩られたなレゲエバーが存在する。


「あれは間違いないでしょ!」


「キャハハハ。あからさま過ぎて笑っちゃうねー」


ほろ酔い気分の二人は薄暗い店内へと吸い込まれていった。


     ※     ※


 突然だが、ここで私がオススメする「アヤカ流、初めての街で安全にマリファナを入手する方法」を伝授しよう。


 基本中の基本はトゥクトゥクやバイタクの運転手に、当たってみることだ。じつに単純だが、たったこれだけのアクションで東南アジアではマリファナくらいはあっさり手に入ってしまう。だが、この時点でつまずくようなら警戒レベルをワンランク上げてかかるべきだ。日本のタクシードライバーにいきなり「マリファナがはあるか?」と尋ねてみれば、どんな答えが返ってくるかは想像に難くない。つまり、「手軽に買える地域か否かの見極め」が肝心なのである。


「なんだそれだけ?」とガッカリされた方、本題はまだなのでご安心を。


答えを発表すると、路上以外でマリファナが入手しやすい場所こそが「あからさま過ぎて笑っちゃう」レゲエバーなのである。

ただし、売人も店舗を構える以上は神経をとがらせているので、GETするためには多少のコツが必要だ。


     ※     ※


 ペナン島のレゲエバーも開幕はの対応だった。

ドレッドヘアーのバーテンに「違うタバコはある?」となにげなく話を持ちかけると、「そんなもん有るわけないさ」と軽くあしらわれてしまった。


(なるほど。やっぱりそう来たか・・・)


最もありがちな模範回答だ。

これは、ボクサーが試合開始の直後に打ち合うジャブのようなものである。


本当の駆け引きはここからだ。


当然ながら相手も感情を持つ一人の人間なのでは厳禁。

ここは焦る気持ちをグッと抑えていったん引こう。

レゲエのリズムに身を任せ、「無いならいいさ」と余裕を見せるくらいでいい。試合の流れがこちら向くまで、ボブ・マーリーへの愛を全力でアピールしよう。


そして、十分に熱意が伝わった頃合いを見て、「魔法の台詞」を呟いてみるのである。


「こんな最高の時間にウィードがないなんて・・・」


バーテンのハートは十中八九の確率で動くはずだ。


案の定、男はアイコンタクトとともに金額をメモった紙ナプキンを渡してよこした。


     ※     ※


俺たちは大麻を吸う。

たくさん吸うほどラスタファーライ(神)に近づく。

大麻は植物だろう?

なぜ大麻を禁止する?

結局、何の理由もなくただ禁じられてると繰り返すのさ。

大麻で自分を見つめ直せば正しく生きていける。

              Byボブ・マーリー

     ※     ※


 カウンターの影からを受け取った私たちは、足取りも軽やかに宿へと引き上げた。追加のビールと甘いお菓子を買い込んでおくことをくれぐれもお忘れなく。

※良い子のみんなは絶対に真似しないで下さい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る