第7話 旅論 -Kazu side-

 翌日は近所のマッサージ屋で旅の疲れを癒やした後に、日本人女性が経営する「さ●らツアー」でアイランドホッピングの予約を取った。

どこの旅行会社でもチケットの手配くらいはカタコト英語で間に合うが、ゲストハウスにせよツアー会社にせよ、俺が真っ先に駆け込むのは日本語が通じる店だった。


旅のツワモノには鼻で笑われるかもしれないが、意外とこれがトラブルを未然に防ぐためのテクニックだったりもする。激安に釣られて参加したツアーで、わずかな金をケチったばかりにひどい目にあったという失敗談は後を絶たない。移動中に現金や貴重品が盗まれたり、興味のない土産物屋を何件も連れ回されるといった被害を被るのは大抵このパターンである。よって、以下に挙げた三点がフリープラン旅行を安全に楽しむ秘訣と言えよう。


①「旅の休息日を設ける」

②「知らない街では日本人経営のツアー会社を選ぶ」

③「買える安全はカネで買う」


スマートな心づかいを忘れずに気前よく旅をリードすれば、女子のハートを鷲掴みにできるはずだ。あなたの株が上がること請け合いである。


さて、薄っぺらい「旅論」はほどほどに、話をさ●らツアーの現場に戻そう。


     ※     ※


「今晩はお酒を控えて早めに休もうね・・」


ピピ諸島巡りはこの旅の山場である。

しかし、スピードボートは天候次第で大きく揺れると聞いたアヤカは俺の船酔いが気掛かりのようだ。

『ピピ諸島(Koh Phi Phi)』=タイ王国・南部のクラビー県に浮ぶ島々。二つの島が砂州で繋がったピピ・ドンが唯一の有人島。


「ヨシっ!明日からのに備えて物資の調達だ!」


戦場に赴く兵士さながらの俺を見て、アヤカと店主の女性は顔を見合わせて苦笑した。

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