第41話 Tonle Sap again -Ayaka side-
水かさが増えた湖を進むと、既視感のある建物がチラホラと現れ始めた。
「へぇー。本当に街そのものだね。予想以上に快適そうで笑っちゃうなぁ」
念願の訪問が叶ったカズさんは、四方を眺めながらご満悦だ。
さっそくこちらに目を付けた物売りの船からジュースとお菓子を抱えた少女が飛び移ってきたが、私がクメール語を話せると分かるとバツが悪そうに戻っていった。
水上集落の子供たちはクメール語のみならず片言の英語とベトナム語を自由に操ることができる。なぜ、カンボジア国内にあるトンレサップ湖でベトナム語が使われているのか?その特殊な経緯ついては前作をご確認いただければと思う。
「在住者からはボッタクれないとみて、あっさり退散しちゃったね~。大学生たちと来た時は大変だったのよ・・・」
「これじゃ逃げ場がないもんなぁ」
※ ※
私たちの船がホームステイ先の民家に横付けされると、それに気付いたご夫婦が「おかえり」と顔をだした。
なにげない一言がたまらなく嬉しい。
心配だったお姉ちゃんは化粧がうまくなり、ずいぶんと大人びて見える。彼女が手にするスマホの待受画面は金髪でピースサインをつくるボーイフレンドの写真だ。
勉強机に向かっていた妹は驚くほど英語が上達し、近頃は湖を訪れる観光客をガイドしているという。
同じ姉妹でも顔形はまるっきり違うので、得意分野もそれぞれといったところか。
再会の挨拶が終わると、一同はプラホックをつまみにビールを飲みながら、ひとしきり、英語、ベトナム語、クメール語の混成会話で盛り上がった。
「俺は普通に遊びに来たかったなぁ。せっかくいいムードなのに・・・」
「私だって調査のことなんて忘れたいよ。でもね・・・。湖に足を踏み入れた瞬間から強く感じるの。ここには必ず何かあるって・・・」
「・・・・・・」
「笑顔の裏に隠された真実が・・・」
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