バンコクキッド3~ロリータメーカー~
綾瀬一浩
【プロローグ】秘密の島で見た幻覚
第1話 ジョージタウン -Kazu side-
ペナン島に向かうフェリーのデッキからはジョージタウンのランドマークであるコムタタワーが高くそびえる姿が見えた。
隣に立つアヤカが、少し伸びた髪を海風になびかせながら対岸を眺めている。
(美人は何をやっても絵になるなぁ~)
そんな魅力的な彼女の横顔にパンティップ・プラザで購入した一眼レフのシャッターを切った。
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『パンティップ・プラザ(Pantip Plaza)』=バンコクのペッブリー通りにあるIT専門のショッピング・モール。
「タイの秋葉原」と親しまれるパンティップ・プラザは東南アジア随一の品揃えを誇り、PCパーツや周辺機器、スマホ、デジカメなどの他に海賊版の音楽CD、DVD、ゲームソフトが売られている。
※ ※
「ちょっと!不意打ちは止めてよねー。スッピンなんだからー!」
そう言って頬を膨らますアヤカは、シェムリアップでボランティア活動を始めてからというもの、凛とした顔立ちの中に母性的な柔らかさがプラスされたようだ。
俺は、フェリーの甲板から「これは俺の彼女だー!」と、世界中に向かって自慢したい気分だった。
ペナン島のジョージタウンはマレー半島南部の港湾都市マラッカとともに、その歴史的な街並みがユネスコの世界文化遺産に登録されている。住宅・商店・ホテル・病院・官公庁など都市基盤が整った街は、日本人ロングステイヤーにも人気が高いそうだ。
ペナン島の人口は約75万人(2014年現在)で、住民は華人(中国系)が多く、そこにマレー系やインド系が加わったことで多民族都市が形成されている。
宗教施設を例に上げてみても中国式の霊廟からイスラム教のモスク、キリスト教会、ヒンドゥー教や仏教の寺院に至るまであらゆる信仰が共存する。
二人は、フェリーターミナルで両替を済ませると、大通りを一つ奥に入ったMuntri Streetのゲストハウスにチェックインをした。
※ ※
旅装を解いて身軽になると、さっそくマリファナでもキメたい気分になった。
しかし、ここで焦ってはいけない。
東南アジアでは、なんの苦労もなくマリファナが手に入るので警戒感が麻痺しがちだが、特にここマレーシアは麻薬等違法薬物に厳罰政策をとっている。覚醒剤の密輸を図った日本人女性が、裁判で死刑を言い渡さたニュースは記憶に新しい。
たとえマリファナだけの所持であっても、現物で200g以上が見つかれば極刑が科せられるので注意が必要だ。
マリファナ青春紀行でおなじみの麻枝光一は、その著書の中で「マリファナは、ほしいと願っていれば向こうからやってくる」と語っている。
つまり、「郷に入れば郷に従え」のスタンスが大切なのだ。
俺は、これこそが「ハッピーなマリファナライフ」を満喫するための最大のコツだと考えている。
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