第69話 Territory -Ben side-
20●●年12月22日。02時27分。
丘上にスナイパーを配する救出チームとドラゴンフラッグのメンバーは鉄柵を挟んで対峙中だ。ナレースワンの二人が前方を守り、その後ろに私、さらに5メートルほど離れた場所にアヤカが立っている。即席のレンジャー部隊としてはまずまずの体制だ。
「ようこそ龍の城へ。守衛から要件は聞きました。さっそく本題に入りたいのですが・・・。まずはお互いの飛び道具を放棄しようではありませんか」
癇に障るほど丁寧な口調で話す男がアジトのリーダーだろう。
首元から刺青を覗かせるボウズ頭がうすら笑いを浮かべた。
「OK!私たちの武器はこれで全てだ!」
我々がオートマチック拳銃4丁を地面に置くと、ただちに相手側も武装を解いた。
ヤツラの拳銃は旧式のリボルバーだ。にらんだ通り武器の性能ではこちらが一段上手だったようだ。だが、作戦行動が「交渉」に決定された今、その優位性に意味はない。
※ ※
アヤカとの出会いはマレーシアへ向かう列車の中だ。
食堂車で相席するTranssexual とはウマが合った。
ルックスは女性そのものだが、内に秘めた
私は、彼女の怪しげな魅力に興味を覚えた。
「所詮は素人」
始めはそう考えていた。
しかし、L&M作戦のメンバーたちは、WWⅡで我々を苦しめた「サムライ」の遺伝子を受け継いでいたのである。
メコン・デルタから繋がる龍の道。
子供の成長を止める東洋の秘術。
アヤカたちがもたらす情報は「プロ」も顔負けだった。
だが、運命の赴くまま突き進んだ「刑事ごっこ」もここまでだ。
彼らは、私のテリトリーへと迷い込んできたのである。
「近い将来、必ず出番が回ってくる・・・」
諜報活動で培った嗅が血生臭い匂いを嗅ぎつけていた。
※ ※
「面倒な話はヤメだ。こちらの要求は一つ。捕らわれの日本人を直ちに引き渡せ!」
「シンプルで結構。私たちも人質の有意義な利用価値を模索していたところです。あと少し遅ければ、二人の身体はパーツごとにバラバラの人生を歩んでいたかもしれませんね。アッハッハハハ。おっと失礼。しかし、一つだけ気掛かりな点が・・・」
「なんだ?」
「あなた方がアジトの秘密を喋らないという保証は?」
男の目がギラリと光った。
「正直に話そう。今回、私たちはタイ・ラオス両政府に無許可で様々な銃器を運び入れた。もちろん出入国審査などというまどろっこしい手間はスキップだ。つまり、まかり違えばこちらが先に牢屋にぶち込まれてしまうのさ。ガッハッハハハハ」
「なるほど。表沙汰になれば、あなた方も無事ではすまないと・・・。分かりました。彼等を解放しましょう。優れた人質交渉人である貴殿と勇敢なお仲間たちに敬意を表します」
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