第79話 Phantom -Ayaka side-

 あくる日の午後。

バンコクに季節外れのスコールがきた。


腹に響く雷鳴。

木々を揺らす風。


病室のガラスに大粒の雨が打ち付けている。


そんな荒れ模様の外を眺めていると、噴水の側に佇む少年が目に映った。


(あれ?あの子・・・。あんなところで・・・)


「えっ!!ウソでしょ?!」


私は、スリッパのままで飛び出した。


エレベーターのドアが開く時間がもどかしい。


本調子でない足を引きずり、混雑するロビーを駆け抜ける。


「ヨシキくん!!!」


ところが、傘もささずに向かった空間から既に少年は消えていたのだ。


彼だと感じたシルエットは幻だったのであろうか?

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