第11話 天才が見た世界 -Kazu side-
暑さが引いた闇に巨大な月が浮かんでいる。奇しくもこの日はフルムーンの夜だったのだ。
トンサイ地区に向かうボートから島側を眺めると、点在する小さなビーチでレイブの準備が進められていた。きっと今夜は美しい浜辺で火と汗の狂宴が繰り広げられるのであろう。
人はそこで「剥き出しの本能」「生への感謝」「無常」「宇宙の法則」といった究極の真理と向き合うのである。
秘境の島とフルムーン。
さらに、それらをも凌駕する女神の笑顔。
地球最強クラスのセッティングがここにある。
こんな状況で飛べないはずはない。
※ ※
マジックマシュルームはインドネシアのバリ島やタイランド湾西部に位置するサムイ島、パンガン群島が有名だが、ピピ・ドン島もご多分に漏れず。キノコの匂いが苦手なアヤカのために、3人前の量でオムレツを作ってもらった俺たちは意気揚々とロングビーチまで引き上げた。
マジックマッシュルームには幻覚成分の「シロシビン」が含まれており、古代メキシコではシャーマンが神託を得るために食したと伝えられている。(マリファナの主要成分はテトラヒドロカンナビノール。THC)
マジックマッシュルームとならび、精神世界への原動力であるLSDも同様の効果が得られるが、サイケトリップは「心の持ちよう」が強く影響するため自然そのままを味わいたい方にはキノコをオススメしたい。
ちなみに、LSDは非常に強烈な作用をもたらす半合成の幻覚剤で、そのトリップをAppleのスティーブ・ジョブズ氏が「人生で最も重要な経験の1つ」と語ったエピソードが有名だ。
日本でもマジックマッシュルームは2002年に規制されるまで合法的に所持・使用が可能だった。下北沢などサブカルが根付く街中で公然と売られていたのは良い思い出だ。
ところが、芸能界のお馬鹿さんが起こした珍騒動を契機に規制対象になったのである。政府に都合が悪いものは十分に議論せぬまま、さっさと立法化する所がいかにも日本らしい。
さじ加減が分からない間抜けが居る限り、遅かれ早かれ規制されるとは予想していたものの、頭の固い政治家や無知な有識者、そして、「大麻は人間を3回殺す」などと笑えるギャグをかます「夜●り先生」にこれだけは忠告しよう。
「今、物質まみれの日本人に必要なのは精神世界への旅である。無駄に不安を煽って悦に入るのはヤメなさい!」
キノコトリップが安全か否かの判断は各自にお任せするが、短い人生、一度くらいは「天才が見た世界」を覗いてみても損はないだろう。
※最新の研究で、マジックマッシュルームの幻覚成分「シロシビン」がインペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)が行った臨床試験により「治療抵抗性うつ病(TRD)」の改善に役立つことがわかってきた。
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