脳幹 まこと

　毒をもって毒を制す。 　肉食という「毒」を制すために考えられたであろう「毒」は、あまりにも罪深かった。 　巧みな人物描写が生み出す独特な世界と、最高のカタルシスを味わおう。…続きを読む

　国に流通している食物には、秘密裏に薬物が混ぜ込まれている―― 　そんな衝撃的な設定を持つ彼女。案の定、友人はまともに取り合わないのだが、彼女にとってはそれこそ信じ難い振る舞い…続きを読む

　誰もが夢見たテレパシーが遂に実現。 　AIによる補正もあって、言葉のみならず、風景や音声をも「共有」が可能になったのだ。 　認識できるもの全てをコミュニケーションの道具とし…続きを読む

　この劇の主演は純粋な少女。 　明るい希望に満ちた作品になるかと思われましたが、観客は誰もおらず、作者の都合でプロローグだけで幕を降ろしてしまったのです。 　続きを待ち望んだ…続きを読む

　初夏。くねくねの観察にやってきた二人の人物。 　理由はテレビ番組で特集されていたから。 　その後に起こることは正気を保っていた間の話……理解を置いていく短編。 ・ 　世…続きを読む

　光あらば影があるように、主人公がいるところ、悪役あり。 　豊富な例によって示される「悪役」像は、読者に納得と驚きを与えてくれることだろう。 　創作の参考だけでなく、純粋に読…続きを読む

　みんながこぞってアピールする「前」に関する痛快な短編。 　そんなに良い場所なのか「前」ってところは。 ・ 　小気味よいテンポで繰り出すテーマは、言葉のマジック。 　何と…続きを読む

　霊媒師のミキは実に不本意なタイミングで、男性の霊を見つけてしまう。 　放置すると怨霊と化して周囲に害を為す。さっさと帰りたい気持ちをこらえて対話を試みるも、一向にミキの意向に…続きを読む

　初恋の彼が心中した。 　惹かれながら、遂に報われることのなかった想い。 　振り返っても、心地よいオレンジソルベはもはや―― ・ 　実家へ帰省すると、街並みが自分の思い出…続きを読む

　愛のための行為をするたびに、愛からかけ離れていく気がする。 　熱を帯びれば帯びる程、なぜか心が冷めていくのを覚える。 　二点の間を往復し続ける、アンビバレンスに満ちた告白。…続きを読む

　これは自分の仮説なのだが、 　ヒトという生き物は「1かければ十分なはずのところに100かけてみた」という系統にひどく刺激を受ける……ツボのような性質を持っているのだ。 　こ…続きを読む

　昼休み、ふらっと立ち寄った店のメニューが美味しくて、今度も立ち寄ろうと思っていたのに忘れてて、味を必死に思い返す。 　そんな経験を、なぜだかこの作品を読んでいる間にしていた。…続きを読む

　会社で首を吊った社員の葬儀に赴いた男。 　社員の妻は、二度と目覚めない夫に思いを馳せながら、昔話をする。 　夫の「目」が好きだったと語る彼女は、徐々に本性を明らかにし…… …続きを読む

　職場の後輩が結婚するらしい。 　幸せそうな表情を浮かべる彼女に、私は他人様用の祝福を贈る。 　内側に複雑な感情を巡らせながら…… ・ 　人を愛することは、きっと素晴らし…続きを読む

　興味深いホラーだった。 　理性とは「間」であり、それは「身体」をまたぐ間に生まれるものである。 　語り部の意見は（根拠の有無はともかく）頷ける点も多かった。 　すぐに激昂…続きを読む

　人間は長い長い道程の果てに、えら呼吸を忘れ、狭い檻の中に入ることを選びました。 　それは進化なのでしょうか。 　疑問を抱く女の子の葛藤、または美しい風景の描写。 ・ 　…続きを読む

　平安に生きる高名な陰陽師、賀茂保憲。 　安倍晴明の師匠とも呼ばれる彼は、その類稀なる能力でサクラにも引っ掛からず、快適な女漁りライフを送ってきた。 　そんな彼でも弘法にも筆…続きを読む

　職を失い、彼に裏切られた。 　子供の時から気の強かった私でも、流石に堪えた。 　不本意な帰郷、雨に打たれて、心のヒビから雫があふれ出す。 　そんな時に偶然出会ったのは子供…続きを読む

　人はなぜ陶芸にあれだけのロマンを抱いてしまうのだろう。 　よく考えてみたら、焼いては割るを繰り返す気難しいオヤジのイメージしかないのに。 　そんな陶芸を別にやりたかったわけ…続きを読む

　ろくでなしがろくでもない目に遭う。 　色鮮やかなネオンの世界で、彼の周りだけが白と黒の世界。 　自暴自棄になった彼は幕を下ろそうとして…… ・ 　同情半分、嘲り半分で進…続きを読む

　人間原理。 　観測の果てに人類が考えついた、ひとつの結論。 　あなたはこれをどう捉えるか？ ・ 　最初に一つ、重要な補足をしなければならない。 　それは、作者が挙げ…続きを読む

　僕が先に好きだったのに。 　これだけ聞くとどこかのラブソングみたいな趣さえあるフレーズ。 　切なさや甘酸っぱさを含めながらも、俗に「脳破壊」と呼ばれるショック症状も愉しむこ…続きを読む

　自宅の場所が分からなくなった―― 　妻の衝撃的な報告から、長い苦難が始まった。 　彼女の様子は悪化の一途を辿ってゆき、夫の認識すら覚束なくなってゆく。 　果たして、愛を取…続きを読む

　紙おむつ。 　赤ん坊か老人の道具と思われがちだが、緊急時においては誰もがお世話になる可能性がある一品。 　選び方や注意事項、ちゃんと分かってますか？ 　一生の恥になる前に…続きを読む

　蝶々が一匹、深い樹海を渡っていった。 　その先にあるのは、失われた約束の場所。 　凍った時を生きる、美しい娘の待つ―― ・ 　気が遠くなるほど長く、白く、そして静かな物…続きを読む

　この話は、誰も何も悪くない。 　小骨が喉につかえて食べた魚のせいにしないのと同じことだ。 　でもチクリと刺さったので愚痴ります。 ・ 　なんという微妙さ。 　読んだ後…続きを読む

　職場恋愛となった二人の男女。 　彼は少し母親への情が強い人物ではあるものの、 　二人の中では健全な付き合いが続いていた。 　滞りなく彼と彼女は進んでいく。 　周りは関係な…続きを読む

　健全な魂は健全な肉体に宿る。 　承認欲求？　スランプ？　アンチコメント？ 　悩む前に本作を読むがよい。 　これこそが、真の執筆活動だ。 ・ 　スティーブン・アームスト…続きを読む

　決して手を出してはならない植物に、手を出した。 　その行為がどんな結末を招くのか、重々理解した上でだ。 　でも、後悔なんてしていないよ。 　僕の求めていたものが、そこには…続きを読む

　地球に迫りくる小惑星。 　レーザー照射によって軌道修正がなされ、防衛は成功したように思われた。 　しかし、事態は想定外な方向へと進んでいく。 　なんとその小惑星から「通信…続きを読む

　歯医者。それは数多のトラウマを作り上げてきた場所。 　眩しい照明、口に挿入されるバキューム、そして甲高いドリルの駆動音。 　治療台に寝かせられた自分はさながら、まな板の上の…続きを読む

　大学院の先輩はイケメンだ。マスク越しでも騒がれるイケメンぶりだ。 　そのイケメンぶりからモデルの仕事やってるくらいイケメン。 　しかも、すごい頭が良い。 　教授をはじめ、…続きを読む

　漫画、小説、ドラマから、昔話や寓話まで。 　常に問われ続けてきた「弱さ」の是非。 　サブカル文化の変遷を踏まえて、弱さがどのように受け取られ、当時の表現者達がどう調理したかを詳…続きを読む

　死んだ彼はケダモノだった。犯れることなら大体犯ったような人だった。 　彼を喪って私の生活もぼろぼろと崩れていった。 　死の真相を探るうちに見えてくるのは、破滅への抗いがたい魅力…続きを読む

　時たま、昔の現実を夢に見る。 　蒸し暑い中の満員電車は辛かった。よく分からない高尚な理想論だとか、危機を煽る宣伝が沢山見えて。 　変わり映えのない毎日。退屈で緩慢とした日々。 …続きを読む

　あの男だけは殺すと誓ったんだ。 　殺されるだけの理由も経歴もある。仲間もそれを望んでいる。 　そしてやってきた絶好の機会に、私は―― ・ 　人は時たま岐路に立たされるも…続きを読む

　大喧嘩した勢いで、いつもとは違う時間に街に出た。 　すべてが新鮮に見えて、なんだか不思議な気分。 　きっと一回こっきりの体験記。 　 ・ 　昔を振り返りたくなる物語でし…続きを読む

　アセクシャル。 　100人に1人の割合でいる「恋愛・性的感情が薄い、皆無である」人。 　そんな人の意見を、ちょっとだけ聞いてみませんか？ ・ 　デッカーの「見えない性的指向…続きを読む

　傷害事件を引き起こした四人の男女。 　彼・彼女は取調室で口を開く。なぜ一線を越えてしまったのか。 　それは許されざる者達の痛みの告解であった。 ・ 　独白という形で、四…続きを読む

　私と旦那はお互いに欠けた半球だった。 　人が当たり前に持っている性的欲求。それがほとんど存在しなかったのだ。 　年に一回、試しにやってみて「やっぱりつまんないね」と苦笑する。 …続きを読む

　子供が自分の影におびえている。 　どんなに逃げても追いついてくるからだ。 　見かねたお母さんは子供にあるアドバイスをする…… ・ 　何だろう。不思議な感覚だ。 　インパク…続きを読む

　この作品を要約するのは難しい。 　ただそういう宣伝文句を言うと「冒頭だけ見たけど《よく分かんない》から、じゃあ読まないや」となってしまう。 　それは作者にとっても、読者にと…続きを読む

　親戚からの頼みで従兄の家に向かうことになった俺。 　昔、色々なことを教えてもらって、大人に見えた兄ちゃんは、現実によってボロボロに打ちのめされていた。 　微妙な関係性の俺は、励…続きを読む

　母が「弟」として連れてきた一台のロボを見て、思わず面食らった。 　そりゃそうだ。今も弟はいるんだから。 　ロボは弟の真似をし続ける。馬鹿らしいと思いながらも、ふてぶてしく「家族…続きを読む

　普段使っているめがねの右側に黒いシミが出来た。 　クリーナーを使っても落ちないそれは、レンズの中でゆっくりと成長をしていく。 　その動向に興味を持った私は…… ・ 　この作…続きを読む

　木の幹が緑色に、葉が茶色に見える。 　見た目には違いが見えずとも、確かに別の世界を生きているかのよう。 　色覚異常を持つ作者様が、例を交えてその実態と意見を分かりやすく伝え…続きを読む

　アオがいなくなって、カラフルなパステルはひとつずつ抜け落ちていった。 　他のみんなが別の場所で持ち前の色を発揮している間も、自分だけは踏み出せない。 　そんなひとつの苦悩の物語…続きを読む