光あらば影があるように、主人公がいるところ、悪役あり。
豊富な例によって示される「悪役」像は、読者に納得と驚きを与えてくれることだろう。
創作の参考だけでなく、純粋に読み物として面白い一作。
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悪役の無双に心躍ったことはないか?
悪役の理屈に頷いたことはないか?
悪役のあまりの非道さに、清々しさすら覚えたことはないか?
ある時は物語のきっかけとして、ある時は主人公のイフとして、ある時は作者の代行者として、彼らは存在する。
正義とは、悪とは……といった堅苦しい議論は本作にはない。
エンタメとして必要不可欠な、憎らしくも離れがたい悪役の説明に徹している。
後半になると、悪役のデザイン方法や陥りがちなバッドプラクティスまで深堀りがされていく。
是非とも本作を通して、人の「癖」を歪める魅力的な悪を探求してほしい。
「ジョジョの奇妙な冒険」のDIOや吉良吉影、「ポケットモンスター」のロケット団、「仮面ライダーBLACKRX」のクライシス帝国、
「遊戯王」のペガサスやマリク……、「ロマンシングサガ2」の七英雄。
私が特に好きな作品はいくつかあるが、それらの多くには、魅力的な「悪役」が登場している。
それでは、魅力的な「悪役」とはなんなのか、そもそも「悪役」はなぜ必要なのか。
本作は、「悪役」を通して、ストーリー作りの本質に迫る創作論だ。
長い物語を書く上では、なんらかの明確なゴールが存在することが重要。
キャラクターであると同時に、主人公の倒すべきゴールとしての役割も担う。それが、物語に欠かせない「悪役」という存在なのだ。
ストーリーにおける「悪役」の描き方に限らず、キャラクターの作り方や物語とは何かについて考えさせられる、珠玉のエッセイであった。
ファンタジーでも、SFでも、現代ドラマでも。
主人公が悪役と対峙して成長し乗り越えることで読者はカタルシスを得る…というのが小説の形として一般的である以上、魅力ある物語には魅力ある悪役が不可欠です。
ただ、悪役と一言で言ってもどういうキャラを悪役に据えれば物語はより良くなるのか、またはこんなタイプの悪役を置きたいんだけど、そうなると物語はどう展開するのが自然なのか…などなど小説を書くにあたって悪役についての悩みは尽きないもの。
そんなとき、この創作論は必ずや一助になってくれるはず。
自身が今まで作り上げた悪役を客観的に見直すうえでもとても参考になりますよ。
作品のジャンルによっては、悪役のいない作品もありますが、悪役は無くてはならない存在だと思います。
だって、その悪役がいないと主人公が引き立ちませんし、悪役だってれっきとしたキャラクターです。主人公が読者に好かれる事はもちろんですが、悪役が好かれるのは、具体例こそありますがあまり聞きません。
主人公を筆頭とするメインキャラクターはもちろんですが、悪役(またはラスボス)が読者に好かれるようなキャラにするのも、また大切な要素です。
ここには『全ての悪』について記されている……と言っても、私は過言ではないと思います。
私もこの作品にならって、悪役キャラの作り方を見直さなくては……