凍った時を、蝶が舞う。


 蝶々が一匹、深い樹海を渡っていった。

 その先にあるのは、失われた約束の場所。

 凍った時を生きる、美しい娘の待つ――



 気が遠くなるほど長く、白く、そして静かな物語だった。

 読んでいくうち、自然とその風景が頭に思い描かれてゆく。

 すれ違って幾星霜、二人の想いが近づいて離れてゆく様子もまた、悲しくも美しかった。