思い出というのは、どうしてこうも染まりやすいのか。


 これを読むとあなたは少なくとも3回は驚くだろう。

 1回はあまりに解像度の高いノスタルジーに。

 1回はあまりに自然な場面転換に。

 そしてもう1回は……



「結末はホラー」と書いてあるのだから、重々分かってはいたはずなのだ。

 そうなりそうな描写も記載されていたのも分かっていた。

 しかし、読み終えた私の心境ははっとしたような(語弊を恐れず表現するなら「あ、これはまずい」と思うような)不意をついた驚きがあった。
 まるで幻想的な景色に見とれて突き進んだ結果、すっかり真っ暗になった森の中、ひとりぼっちできょとんと佇むような気分であった。

 最初から最後まで素敵な作品だった。