救えなかった彼の命と、救われなかった私の魂。


 初恋の彼が心中した。

 惹かれながら、遂に報われることのなかった想い。

 振り返っても、心地よいオレンジソルベはもはや――



 実家へ帰省すると、街並みが自分の思い出と変わっていて「変わったなあ……」と遠い目をするのだが、

 この作品からはその雰囲気がひしひしと感じられた。

 満足しようと後悔しようと、過ぎ去ったものに手を伸ばすことは出来ない。

 苦々しい思いの吐露、置き去りになってしまった気持ちの描き方が見事で、読んだ後に深く息をついた。