あまりに、あまりに罪深すぎる。


 毒をもって毒を制す。

 肉食という「毒」を制すために考えられたであろう「毒」は、あまりにも罪深かった。

 巧みな人物描写が生み出す独特な世界と、最高のカタルシスを味わおう。



 シェーラーは人間について「おのれの欲望不満足が衝動満足を超過してたえず過剰であるような存在」と残した。

 人間だけが生物的な領域(本能)を超えた欲望を抱くらしい。
 だから、必要以上に性行為をしたり、(身体的には)正常のままイレギュラーな性癖を持つということだ。

 読んでみて「人間ってここまで罪深くなれるんだなあ」と思った。

 ここまで引っ剥がされるとむしろ清々しさすらある。

 読む人を選ぶのは間違いない。それに見合ったエグみがある。
 ただ、どうしてか、それに格別の旨味を覚えてしまうのだ。
 フグを解毒してまで食べようとするのと似たようなものかもしれない。

 実に罪深い味だった。