「ない」という特性について。


 アセクシャル。
 100人に1人の割合でいる「恋愛・性的感情が薄い、皆無である」人。
 そんな人の意見を、ちょっとだけ聞いてみませんか?



 デッカーの「見えない性的指向 アセクシュアルのすべて」を読んだ程度であるが、他の性的指向に比べても、アセクシャルの性質はかなり理解しにくいと思った。
 変わった点が「ある」のではなく、大多数が共有しているものが「ない」という特性であるから。
 だから「変わった人」というより「経験が足りていないだけでは?」という表現をされてしまうし、LGBT内でも妙に距離を取られている、という状態とのことだった。

 感情がないわけではないし、人間嫌いというわけでもない。血も涙もあるし、友好的でもある。愛を知らないわけでもない。

 そんな複雑な特性。

 作者は「ちょっと聞いてくれ」と話をしだす。
 この軽妙な語り口に引っ張られてスルスルと読んでいた。

 カミングアウトと聞くとどうしてもヘヴィな感じで身構えてしまうが、そういった重みはない。
 でも要所ではちゃんと意見が出ている。

 友達になりたい、そんな話だった。