私にとって契機となったWeb小説がある。
それは設定の緻密さ、キャラクターの立ち方、展開のしかた、コメディとシリアスの配分、すべてが見事にかみ合った長編作品だった。
インディーズっぽいノリがあって、良くも悪くもそのまま商用に出来るかというと疑問ではあったが、その部分も含めて心を掴んだ。定期更新を楽しみしていた稀有な作品だった。終わった時には嬉しいような寂しいようなと複雑な感情が湧いてきたものだ。
いや素晴らしい。素晴らしい作品だと思うのだが、1つだけ本当に勿体ない部分があるのだ。
その作品はバトル要素を含んでおり、ラスボスに該当する存在もいた。
作中におけるほぼすべての元凶。物語の随所に登場しては圧倒的な力を見せ、超然とした立振る舞いが「格の差」を示す。
長編作品で対峙するにふさわしい、なんと見事なキャラ造形なのか。主人公含め、どうやってこれに立ち向かうのか。楽しみだったわけである。
そして、長年の連載、そのクライマックス、ついに本格的に接触。空前絶後の戦闘――にはならなかった。
なんかよく分からない、出し切れなかった作中設定と思しきことをぶつくさ語りながら、勝手に溶鉱炉に親指立てて沈んでいったのである。
いや、あなた誰ですか? 状態。
一応この展開に説明自体はつけられていて、まるでご都合展開というわけではない。
しかし、そこに至るまでの戦闘は全部盛り上がって、敵の断末魔に至るまで、これこれぇ! だったのである。
――落差がデカすぎた。
特にこの作品は様々な苦境とその打開のパターンを描くのがうまく、ただ単に力勝負に持ち込ませない魅力があった。長編をだらけずに読ませる力もあった。
作者のセンスは間違いなく優れていた。だからこそだった。決着宣言がなされた際に「こ、これで終わりぃ!?」と動揺したことは忘れられない。
もちろんプロの作品にもそういう役割のキャラが登場してくることはある。物語としての決着を担うための「禊ぎ」としての敵。登場しながらももう十字架に括り付けられてる感じのキャラはいる。
件のラスボスもすべての元凶的な存在である以上、どうにかして終わらせなければならなかった。そういうことだろう。
とはいえ、変に期待値が上がっていた状態では、やはり衝撃があった。腕があるというのも罪なんだな、と思ったものだ。
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色々と語ってきたが、その作品への感謝の方が断然上なのは言うまでもない。
全体的に安心して読めるし、何よりWeb小説らしさを活かしていると思った。紙では同じ感覚にはなれないだろう。
批判的な意見というのもあって、具体的な名前を述べるのは差し控えるが、良い作品であった。連載途中で出会い、終わりまでリアタイで追いかけていったのは良い思い出だ。
そして、自分が仮に長編を作るとしたら、壮大なことを口走るキャラクターの取り扱いには注意しようと思った。