• ホラー
  • エッセイ・ノンフィクション

生きる意味について


 あじさい様よりお勧めされた『生きる意味』(上田紀行著、2005年)を読んだ。

 色々と言いたいことはあったのだが、まあ「変わってないな……」というのが正直な感想だろうか。

 20年も前の本ではあるが、バズり、コスパ(タイパ)、親ガチャ、弱者男性……といった存在は当時から十分予想できたということだろう。

 まあひょっとしたら、1990年代の時点で、またはそれ以前のバブルの時点で察していた方もいたのかもしれないが……

 動画サイトが生まれ、GAFAが世界の実権を握り、カクヨムが生まれ、そして生成AIがブレイクした。

 恵まれた人は増えたし、その契機も増えた。

 動向はすべて記録されるようになった。
「かけがえのなさ」自体が数値による判定に変わった。

「数値から抜け出そう」「無個性化から抜け出そう」という誰かの提言が高い数値を叩き出し、秒速で模倣されてミームとなり、たちまち無個性化した。

 つくづく砂漠だなと思った。
 恵みの雨は、すぐさま圧倒的な渇きによって飲み込まれてしまう。

 しかも殺風景な……見晴らしの良いものではなく、見た目はけばけばしいことこの上ない砂漠だ。
 目はちらつき真っ直ぐにすら歩けない。耳も鼻も口も皮膚も、全てが同様に封じられている。パッケージングされている。
 今後はレコメンドされた人生を生きていくのかもしれない。

 終盤は内的な成長に関する話が出ていた。
 救いではあるが、果たしてどこまで現実なのか……

2件のコメント

  •  読んでくださってありがとうございます。
     最初から最後まで非の打ちどころのない本はなかなかありませんし、スマホ登場以前の本なのでどうしても古く感じるかもしれませんが、この本を読むことで何かしら得るものがあったのであれば嬉しいです。
     内的成長の話は、まあ、現代社会はどん詰まりで逃げ場がないという話ばかりに終始しても仕方ないから、前向きな提案もしておこう、といったところではないでしょうか(笑) この本でひとまず重要なのは、我々を取り巻く社会の特徴を理解することで閉塞感から抜け出しやすくなるということの方でしょうから、具体的な方策については、参考になりそうなことだけ頭の片隅に置いておく、くらいの距離感で良いのではと思います。
  • コメントありがとうございます。
    古さはまったく感じませんでしたね……流石ベストセラーだけあるなと思いました。
    環境が変わろうとも、「現代」という枠組みは当時も今もほぼ一緒であり、問題点も同じ場所にたどり着いている。
    その有用な解決案が出せずに二十年が過ぎたと言ってもいいのかもしれません。

    この背景には「数字」「統計(正規分布)」が示す圧倒的にして徹底的、あまりに非動物的な説得力があるのでしょう。
    このインパクトを超え、根治への道を進めるなら「脳を破壊」するしかないくらい。まあ、それは実質不可能な手ではあるので、時折は数字以外、必然以外のラフな領域に思いを馳せる……という点こそが生きる上での大切な点なのかもしれません。
コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する