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乗りかかった船、沈みかけた船


 エースの若手が退職するという話を聞いた。

 ステップアップのためらしい。

 引き留めることは、誰も出来なかった。
 惜しいのは当たり前だが、それを差っ引いてもどうにも出来なかった。

 そのくらい地頭が違ってて、高みにいるのに、更なる成長に貪欲で、その上で謙虚だった。
 倍、3倍貰ってもバチは当たらないだろう。

 社内の誰一人として、正しく扱えなかった人物だ。
 私も少しばかり関わったことがあるが、まあ、格の違いがあった。むしろ今までこそが疑問符だった。
 その判断は限りなく正しい。それでいい。

 私はそんな人が置いていこうとした会社を、何とか盛り立てるべく活動している。
 課題は山ほどあるし、長年溜まった膿は熟成物の臭みを放っている。
 鬱積した思いは、メモ帳に都度書いてあって、どこかで出すつもりだ。

 とはいえ、乗りかかった船というのもあって、気を引き締めて取り組んでいる。

 実際は、座礁した船を希望の大海原に再び出すのではなく、既に沈み始めている船を延命させることにしかならないのかもしれないけれど。

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