漫画、小説、ドラマから、昔話や寓話まで。
常に問われ続けてきた「弱さ」の是非。
サブカル文化の変遷を踏まえて、弱さがどのように受け取られ、当時の表現者達がどう調理したかを詳細に描いた評論。
・
タイトルこそは硬派であるものの、年代ごとの変遷が名作達を引き合いに出しつつ分かりやすく整理されている。
克服、打倒されるべき存在だった「弱さ」が、少しずつ居住権を得て、性質そのものに価値を与えられ、自治をしていく……
そういった成長物語のような側面があって興味深い読み物だった。
読みながら思ったこととしては、時代が進むとともに「私達」という主語がどんどん小さいものになっている点だろうか。
それが十分に大きい間は、グループでくくったり、基準で区別をしたり、「常識」という共通認識を作ることは有用だったのだろう。
しかし、もはや例外の方が多くなって、随所で転覆が見受けられている。
本当に真っ当に、強く、正しくなりたいのか?
そのままでいることは出来ないのか?
やさしい世界とは結局は何なのか?
様々な問いかけが浮かんでくる。頭を悩ます良い読書体験だった。