アセクシャルへのレクイエム


 私と旦那はお互いに欠けた半球だった。
 人が当たり前に持っている性的欲求。それがほとんど存在しなかったのだ。
 年に一回、試しにやってみて「やっぱりつまんないね」と苦笑する。

 それでも半球同士で寄り添って、穏やかな結婚生活を続けてきた。
 これからもずっと、この人と一緒に波乱のない人生を送る。

 そうなるはずだった。



 タイトルからして只者ではないと思いましたが、本文は更に只者ではありませんでした。

 淡泊だった夫婦に不意にやってきた生の衝撃。
 動物的な営みの前に理性と感情がごちゃ混ぜになって、でも、夫婦としての愛はちゃんと持っていて。
 何でしょうね。語弊を覚悟で語るなら「自分がしてきた行為が【ごっこ】だったと突き付けられた」ような、そういう苦しさ、悔しさがひしひしと伝わってくる。

 文章もそうなのですが、話の運び方も優れているので、「なんで……ああ、でも、……だぁーーーっ!」と語彙を失ってしまう。

 ほろ苦いけども、実に良い読書体験をしました……