未知のできごとに遭遇したとき、人はびっくりします。「びっくりした!」で終わる人もいれば、「なぜこうなった?」と考え込む人もいます。後者のありようもさまざまで、「何でだと思う?」と人に尋ねまくる『文献調査タイプ』もいれば、不思議の現場を執拗に見つめる『観察タイプ』、同じことが起きるかどうか危険も顧みず試してみる『実験タイプ』など。この後者のいくつものタイプのいいとこどりをすると研究者と呼ばれる人間が出来上がるようですね。
実験ができるタイプの研究は、たいてい次のような過程を経て成立します。
『起きている事象の把握』-->『仮説の構築』-->『実証実験』-->『結果の考察と仮説の修正』-->『実証実験』(繰り返し)
遠部右喬さまの本作は見事に研究のあるべき流れを踏襲し、エレガントに謎の解明へと進んでいるように見えて、とてもわくわくさせられました。
研究なんていうと、まるで大学や研究機関で行われる高尚な知的遊戯のように思われがちですが、本当は身の周りで日々散見される「なぜ?」から始まるものです。
いつもなら見過すちょっとした不思議に、気が向いたらじっくり向き合ってみませんか。日常がひっくり返るくらいの驚きに繋がるかもしれません。
ところで、この『洗濯機の中でパンツの周りのみ次元歪む仮説』の研究には後日譚あります(『洗濯機の中で歪む次元・2』)。研究がさらに深まっていきますので、ぜひそちらもご覧ください。
パンツひっくり返りに悩まされている人たちは意外に多いようです。中には奥さまにだらしないと濡れ衣を着せられる旦那さまもいらっしゃるようです。それにもかかわらず、そのメカニズムはいまだ解明されていません。遠部右喬さまにはぜひ、今後も研究を続けていただき、『洗濯機の中でパンツの周りのみ次元歪む仮説』を理論として確立させ、この悩ましい状況を打破していただきたいものです。
これは自分の仮説なのだが、
ヒトという生き物は「1かければ十分なはずのところに100かけてみた」という系統にひどく刺激を受ける……ツボのような性質を持っているのだ。
この作品はその性質をくすぐる。
知ってた方が良いかといえば、正直どうでもいいが、知っとくとほんの少~~~し面白そうといったトピックに、
全 力 を注いでいる。
作中での出来事もそうだし、その文章表現もそう。
「一体どこにそんな力を隠し持っていた……!? いや、そもそもその力をどうしてそんなことに……!?」
と突っ込みたくなる。
まさしく未知とのファーストコンタクトだ。
これから読む方は「なんでやねん」の準備をしておこう。